著者
米本 紀子 米本 重夫 小林 俊司 神移 佳 井戸 和己 森本 正昭
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.61-64, 2020-02-25 (Released:2020-03-04)
参考文献数
9

身体表現性障害とは「検査所見に異常が無く,医師がその症状には身体的根拠が無いとするにもかかわらず,身体症状を反復して訴え,絶えず医学的検査を要求する」と定義される.身体表現性障害として紹介された8人が,当院ペインクリニックでの介入により,どのような経過をたどったか報告する.症例A~Cは未治療であった身体的根拠があり,その器質的原因に対する治療によって痛みが軽減し,生活機能が改善した.症例D~Fは生活機能が保たれており「慢性痛の治療目的は生活の質を改善していくことである」という説明を理解し,身体症状を反復して訴え完治を期待する言動をやめた.症例Gは8カ月後に解離性障害と診断され精神科入院となった.症例Hは,生活機能は保たれていたが慢性痛の説明に納得できず,1年後も身体表現性障害の言動を継続していた.以上より,身体表現性障害と診断されても,ペインクリニックの介入が有効なケースもあると考える.