著者
神農 泰生 岸本 麻実 穴吹 優佳 神谷 絵里子 大前 正範 西谷 佳浩 吉山 昌宏
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.622-629, 2008-12-31 (Released:2018-03-30)
参考文献数
31

複雑な窩洞に緊密な充填を行うことができるフロアブルレジンは,MIの概念の普及とともに重要な材料として注目されており,さらに,臼歯適応フロアブルレジンが製品化されることで,その重要性は増してきている.しかし,臼歯適応フロアブルレジンは比較的新しく,その基本的物性や,口腔内環境での物性変化に関する報告は少ない.そこで,臼歯用フロアブルレジンと従来型のペーストタイプのコンポジットレジンの物性を比較するとともに,口腔内pHサイクルの一端のモデルとして,脱灰・再石灰化溶液への浸漬による物性の変化を,曲げ強さならびに圧縮強さで検討した.フロアブルタイプとして,クリアフィルマジェスティLV(ML),ユニフィルローフロープラス(LP),エステライトフロークイック(FQ)を,ペーストタイプとして,クリアフィルAP-X(AP),Majesty Posterior(MP),ソラーレP(SP),グラディアダイレクト(GD),ビューティフィルII(BF),エステライトPクイック(PQ)を用いた.圧縮強さおよび曲げ強さ試験は,それぞれ円柱試料,棒状試料を作製し,負荷条件として脱イオン水,クエン酸水溶液および再石灰化溶液に1週間浸漬した後,オートグラフを用いて測定した.摩耗量試験は円柱試料を脱イオン水に1週間浸漬し,摩耗量を測定した.圧縮強さの試験の結果,フロアブルタイプのFQ,MLは,脱イオン水群でペーストタイプのPQ,MPに次ぐ高い値を示した.クエン酸水溶液群ではFQは最も高い値を示し,MLもFQ,AP,MP,PQにわずかに劣るものの高い値を示した.再石灰化溶液群ではMLが最も高い値を示し,FQはML,MP,PQ,APに次ぐ高い値を示した.MP,ML,BF,FQ,PQは,負荷条件下で圧縮強さに有意な差が認められた.曲げ強さの試験の結果,MLは脱イオン水群でMP,PQ,APに次ぐ値を示し,BF,FQと続いた.クエン酸水溶液群では,ML,FQともにMP,PQに次ぐ高い値を示し,再石灰化溶液群でもクエン酸水溶液群と同様の傾向がみられた.また,MP,ML,FQ,PQは,負荷条件下で曲げ強さに有意な差が認められた.摩耗量試験の結果,SP,LPはほかのものに比べ,摩耗量が有意に大きかった.以上より,臼歯適用フロアブルレジンの圧縮強さ,曲げ強さはペーストタイプとほぼ同等であり,また負荷条件下での圧縮強さ,曲げ強さに大きな変化は認められなかった.