著者
神﨑 護
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.1224-1227, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
13

この小文では東南アジアの森林消失と再生について紹介したい。東南アジアの多くの国では,独立後の外貨獲得手段として,簡単にアクセスできる木材資源がまず経済成長の第一段階として利用された。森林の大規模な農地化がその後1960年から1990年にかけて進行し,森林消失を決定的にした。これに対して,地球規模での伐採反対キャンペーンや森林保全の動きがおこり,それは1998年のリオの地球サミットでの森林原則宣言につながり,さらに1997年の京都プロトコルで採用された植林再植林クリーン開発プログラムにおける炭素クレジット化にもつながった。熱帯各国での森林伐採の方法も変化した。現在多くの国々で,低インパクト伐採の適用が義務化され,国際的な森林認証の取得も加速しつつある。度重なる洪水や土石流被害は,東南アジアの人々の森林保全についての考え方を大きく改善してきた。小規模な森林保有者,農民や地域共同体は木材生産の重要なプレーヤーになりつつある。日本の森林状況は第二次世界大戦直後の悲惨な状況から,70年もかからずに大きく改善された。東南アジア各国の森林状況も今後30年の間に劇的に改善されることが期待できる。