著者
金澤 洋一 上村 真由子 福井 美帆
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1_2, pp.105-111, 2009-06-30 (Released:2012-06-15)
参考文献数
12

アベマキ・コナラを中心とする里山薪炭林からの薪による家庭へのエネルギー供給量を推定した.兵庫県宍粟市の中山間地域に位置する集落において,聞き取り調査から「分け柴」と呼ばれる薪の採取システムを明らかにし,現地林分の伐倒による現存量調査から「分け柴」に必要な面積を計算した.またこれらの結果にもとづいて,「分け柴」によるエネルギー供給量を推定した.その結果,毎年,20~30 GJ程度が薪により供給されていたことがわかった.この量は,現在日本の一般家庭で消費されるエネルギー量である43 GJの半分あるいはそれ以上に相当し,現在でも「分け柴」によって日本の一般家庭が必要とするエネルギー量のかなりの部分を供給できることがわかった.「分け柴」として利用されていた面積は集落が利用してきた土地のごく一部で,本集落50世帯でも14 ha程度と推定され,現在残されている広葉樹林でも十分に足りることがわかった.