著者
福島 文典
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.363-372, 1987-09-10 (Released:2014-11-20)
参考文献数
22

回盲部切除後に発生する種々の機能障害は, いまだ病態の解明が不十分であるが, 近年回盲部切除後の腸管運動の変化, さらに下痢の発生に胆汁酸の作用が関与するといわれている. この病態を解明する目的で, 回盲部切除犬を用いてforce transducer・X線撮影により腸管運動の変化を観察し, 同時に糞便中・血清中の胆汁酸を測定した. 回盲部切除により大腸運動は亢進し, 腸管内容の通過時間の短縮を認めた. 一方, 大腸内の総胆汁酸・DCA・CDCAは増加し, これが大腸粘膜に作用し大腸運動亢進の一因となると思われた. 回盲部切除による括約機能の廃絶と胆汁酸の大腸内増加は, 大腸運動の亢進, ひいては下痢発生と密接に関係していることが示唆された.