著者
福島 栄二 岩佐 正一 遠藤 伸夫 吉成 竜也
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.413-421, 1966 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
3 6

1. 著者らは Camellia assimilis, C. granthamiana, C. hiemalis のそれぞれ1品種, C. japonica の14品 種, C. japonica subsp. rusticana の3品種, C. salicifolia, C. saluenensis のそれぞれ1品種, および不詳の C. spp. 3品種について体細胞染色体数の調査を行なうとともに一部の種については核型分析を行なつた。2. 核型分析の結果は次のごとくであつたC. japonica K(2n)=16V+8J+2Jt+4vC. japonica subsp. rusticana (野生1品種) K(2n)=16V+8J+J1t+J2t+4vC. salicifolia K(2n)=16V+8J+2Jt+4vC. saluenensis (1品種) K(2n)=17V+7J+J1t+J2t+4vC. japonica subsp. rusticana (野生1品種) とC. saluenensisの1品種と推定した“西王母”は核学的調査の結果染色体の構造的雑種あるいは真正雑種である可能性が強い。3. 染色体数の調査結果は第1表に示した。附表として取りまとめた現在までの研究結果に対して, 著者らにより新たに附加された知見は次のごとくである。(i) C. assimilis は2倍体種であること, (ii)C. japonicaにおいて低3倍体 (3X-1=44) および5倍体が見いだされたこと, (iii) C. reticulataの1品種“大谷唐椿”(2n=91) の染色体中には1つの小型過剰染色体が存在すること, (iv) ツバキ系の園芸品種と見られる“手向山”および“梅ケ香”はともに4倍体であること, などである。4. ツバキ属の倍数性系列は2倍体 (2n=30) から8倍体(2n=120)におよび, 染色体数の明らかにされた種の過半数は倍数体種であるか種内倍数性の分化を含む種である。しかも4倍体が意外に少なく3倍体, 6倍体が非常に多いことなどの事実は, ツバキ属の倍数性系列の成立には3倍体が主要な役割をになつてきたことを強く示唆する。ツバキの5倍体品種, ツバキ系4倍体品種 (雑種起源の疑いが強い) の発見は, 倍数体レベルでのツバキの交雑育種に対する強い期待をいだかせる。