著者
福永 昇平 石田 千尋 中岡 明久 伊藤 孝史
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.563-568, 2014 (Released:2014-09-28)
参考文献数
13

本邦では抗MRSA薬はバンコマイシンの他5種類が認可されている. 今回重症MRSA感染症に対してダプトマイシン+リネゾリドの併用によって救命できた1例を経験したので報告する. 症例は47歳男性. 血液透析歴は13年. 近医にてカテーテル感染症を発症し, 当院へ緊急搬送となった. 敗血症性肺塞栓症および全身に感染巣があり, 血液培養でMRSAを認めたため, バンコマイシンによる治療を行ったが改善しなかった. このため, 腸腰筋膿瘍ドレナージおよびダプトマイシンとリネゾリド併用に変更した. その後炎症反応改善しCT上肺炎・膿瘍が改善したため, リネゾリド, ダプトマイシンを中止した. 以後再発は認めず, 透析用人工血管移植術施行後にリハビリ転院した. 現在MRSA感染症に対してはバンコマイシンが第1選択となることが多いが, 組織移行性が悪いという問題がある. 今回, 全身にMRSA感染巣を認めたため, ダプトマイシンとリネゾリドを併用し, 救命することができた. 重症MRSA感染症に対しては抗MRSA薬併用療法も選択肢となりうることが示唆された.