著者
福田 光成
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.327-335, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
45

熱性けいれんの病態や熱性けいれん重積後の内側側頭葉てんかんの発症機序については未だ多くの議論があり, 神経免疫学的機序もその候補である. 熱性けいれんの動物モデルでの検討では, interleukin (IL)-1βは発作を促進し, 逆にIL-1 receptor antagonistやIL-6, IL-10は発作を抑制することが明らかとなった. また熱性けいれん重積の動物モデルを用いた検討では, 重積発作の誘発後にIL-1βを投与すると成熟期の後天性てんかんの発症が促進された. また, high mobility group box 1 (HMGB1) についても検討し, HMGB1は前述の実験的熱性けいれんや熱性けいれん重積誘発後の後天性てんかんの発症を促進させた. ヒトの熱性けいれん患者や熱性けいれん重積の既往を持つ内側側頭葉てんかん患者の一部ではIL-1βやHMGB1を過剰に産生してしまう素因があり, これら炎症性メディエーターの過剰産生が病因として関与している可能性が示唆された.