著者
福田 圭志 中村 英美 光田 尚代 井尻 朋人 鈴木 俊明
出版者
日本転倒予防学会
雑誌
日本転倒予防学会誌 (ISSN:21885702)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.53-59, 2017-06-10 (Released:2018-06-22)
参考文献数
35

【目的】主要な転倒リスク評価により後方転倒を予測できるか検証することを目的とした。【方法】対象は独歩または杖歩行可能な地域在住高齢者 61 名とした。対象者を過去 1 年間で転倒経験なし(Ⅰ群),後方転倒以外の転倒経験あり(Ⅱ群),後方転倒経験あり(Ⅲ群)の 3 群に分類した。3 群に対して 5 回椅子立ち上がりテスト(Five-Times-Sit-To-Stand Test: 以下,FTSST),通常歩行速度,Timed Up & Go Test(以下,TUG),片脚立位時間を計測した。なお,片脚立位では足の着地位置が,前方,後方,中間のどの方向へ着地するのかを 5 回測定した。各評価結果の 3 群間の比較には Steel-Dwass 法を用いた。また,各群の片脚立位の足の着地位置が前方着地と後方着地,中間着地のどの方向に関連するかを χ2 独立性の検定を用いて検証した。【結果】Ⅰ群とⅢ群間の比較では,FTSST はⅠ群が 14.2 ± 4.7s,Ⅲ群が 19.4 ± 6.3s,通常歩行速度はⅠ群が 0.8 ±0.2m/s,Ⅲ群が 0.6 ± 0.1m/s,TUG はⅠ群が 12.6 ± 4.7s,Ⅲ群が 16.9 ± 5.7s と,いずれもⅢ群が有意に劣っていた(p < 0.05)。Ⅰ群とⅡ群間ではすべてに有意差はなかった。片脚立位における測定時間は 3 群間で有意差はなかった。また,片脚立位の挙上側足の着地位置に関しても,3 群ともに足の着地位置と転倒方向の関連性はなかった。【結論】現在,多く用いられる転倒リスク評価のみでは後方転倒の予測は難しいが,後方転倒は下肢筋力や立ち上がり,歩行,方向転換能力のより低い高齢者に生じやすいことが示された。