著者
福田 晟 山谷 聡 小葉田 亨 今木 正
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.193-198, 1993-06-05

前報において, 地表にわずかな積雪があり, 気温0〜-4.4℃, 風速4〜7ms^<-1>のもとで葉身に葉枯れ, 落葉が生じ, この時夜間の葉身水ポテンシャル (Ψ_L) が-1.2MPaに, 翌日の昼間ではさらに最低-2.3MPaまで低下したことを報告した. そこで本報告は, 人工的に1年生苗の茶樹に低気・地温, 強風条件を与え, Ψ_Lの低下と寒風による被害発生との関係, 及びΨ_Lの低下の原因を明らかにしようとした. その結果, 低気・地温, 強風の組み合わせに暗黒後照明条件のもとでΨ_Lは-0.7〜-1.8MPaに低下し, 照明条件下で圃場と類似した枯死被害が生じた. また, 低温照明条件下では蒸散速度の増大に伴うΨ_Lの低下が大きいことから, このΨ_Lの著しい低下は低温による植物体内の水の通導抵抗 (R) の増大にもとずくものと考えられた. そこでさらに葉身, 茎, 根各部分への加圧と出液速度との関係を求めて各器官のRを推定したところ, 葉身と根のRは0℃では10℃に比較し約1.6倍, 20℃に比較して約3.2倍大きくなった. 以上から, 山陰地域における茶樹の寒風による被害は低気・地温によって特に葉身と根のRが著しく増大している時に, 強風, 及び翌日の日射により蒸散が促進されて, その結果, 葉身Ψ_Lの著しい低下, 葉身組織の脱水が生じて引き起こされるものと推定された.