著者
福田 泰樹
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.17-25, 1999-02-20

高槻市・島本町で行われている肺がん個別検診の効果を知る目的で,当科で診療した肺癌患者396例について,居住地(高槻市・島本町)(T/S群)とその他の地域(Oth群))と初診日(1990年以前(ear1y群)と1991年以後(1ate群))とから,合計4群(earlyT/S群,1ateT/S群,ear1yOth群,1ateOth群)に分け,予後をretrospectiveに比較検討した.検診外発見例に限った中問生存期間/5年生存卒はそれぞれ各群,47.4週/11.6%,74.9週/23.5%,45.7週/16.5%,40.9週/9.1%で,1ateT/S群の予後は各群に対して有意に勝れていた(p=0.0184〜0.0363).同地域では1991年以後,検診外発見において肺癌の発見時期が早まった結果と考えられた.理由の一つとして,ユニークな検診体制をとる同地域の肺がん個別検診が副次的に同地域の肺癌診療レベルを向上させた可能性を指摘した.肺がん個別検診の評価は,精度管理指標に加えて肺癌診療レベルの向上など地域に還元される副次的効果でも行う必要があると考えられる.