著者
福田 真清
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.42-54, 2017-08-31 (Released:2017-09-27)
参考文献数
20

本研究は,老障介護家庭において知的障害のある子どもを自立へと導いた母親の経験について,母親の行動や認識とそれらに影響した要因の可視化を目的とした.60歳を過ぎてから子どもが自立した母親11名を対象に半構造化面接を実施した.分析には,複線径路・等至性モデル(TEM)を用いた.母親の経験は【違和感に気付く】から始まっていた.[理屈ではない「あの」暗黙の仲間意識]と[子離れ・親離れの成功体験]がせめぎ合うなか,【窮地に追い込まれ焦燥し決断に踏み切】った母親は,子どもを【グループホーム送り出】していた.その後も自立にまつわる経験は続き,{肩の荷が降りホッとする}と{二重生活で大変さは変わらない}の2類型に分かれ,【将来を再考する】ことが明らかになった.子どもの将来が思い描ける機会や情報の提供,時機を見計らいながら子どもの自立への意識が高まる支援,子どもが自立した後も母親と子どもへの継続的な支援の必要性が示唆された.