著者
藤田 晴久 福島 紘司 桜井 敏晴 福間 真理子 瀬戸 淑子 藤田 知信 伊藤 光一 篠原 紀夫 由本 靖 石原 俊信
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.5, pp.566-574, 1990-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

有機ケイ素化合物の抗腫瘍活性を培養細胞系と実験動物移植腫瘍系を用いて検討した。50種類の化合物には培養細胞系においてEhrlichがん,肉腫-180.Lewis肺がんおよびB-16メラノーマに対して細胞増殖抑制効果を示す化合物が認められ,また,マウス移植腫瘍系においても上記の各固形腫瘍に対して経口投与によって有効な抗腫瘍活性を現わす化合物が見いだされた.中でも2-(2-Trimethylsilylethy1)thiaethylamine(SDK-12A)は最も強い活性を示し,その効果は抗がん剤5-FUのそれに匹敵するものであった。さらに,SDK-12AはLewis肺がんの転移を有意に抑制し.遅延型免疫機能賦活化作用も認められた。またSDK-12Aは実験動物において毒性面では安全性の高い化合物であった。これらの結果は,SDK-12Aが多面的作用を持った特異な化合物であり,抗がん剤開発の研究領域からみて興味ある物質である。