著者
渡邉 真理 伊東 祐信 禧 光太郎 古賀 照邦 岩隈 裕明 桑原 寛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.1310-1315, 1993-11-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
13

発作性心房細動,脳硬塞,腎梗塞などの発症を契機に,三心房心と診断された高齢者を含む3症例を経験した. 症例1は62歳, 男性. 約10年前から時折数分間持続する動悸を自覚し,1991年8月頃より動悸が頻回になったため当院を受診した.1年前に腎梗塞の既往がある.動悸発作時の心電図は心房細動を呈し,心臓のシネモードMRI,経胸壁および経食道心エコー検査にて左房内に異常隔壁を認め,三心房心と診断した.症例2は32歳,男性.1984年3月1日夕刻,1時間程度意識消失発作出現.意識回復後,右半身に脱力感を自覚.翌日起床後言語障害に気付き,当院を受診した.頭部CT検査で左前頭葉に広範な低吸収域を認め,脳硬塞と診断された.心エコー検査で左房内に大動脈後壁から僧帽弁後尖に向かう異常隔壁を認め三心房心と診断した.症例3は77歳, 男性.1980年7月4日めまいを主訴に来院.精査の結果椎骨脳底動脈循環不全と診断された.頭部CTで脳硬塞の既往があった.胸部X線写真でCTR58%の心拡大と肺うっ血を認めた.心エコー検査で左房内異常隔壁と心房中隔欠損を認め,左房および右室負荷所見を呈していた.三心房心はまれな先天性心疾患であり,多くは小児期に診断され,成人例での報告は少ない.当院の3症例はいずれも成人例であり,これまでの報告例中,最高齢例を含む.先天性心疾患の診断,治療および予後について重要な経験例となると考え,若干の文献的考察を加え報告する.