著者
秋山 伸子
出版者
松山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

一六五九年の復活祭の休み明け以降劇団のメンバーとなったラ・グランジュが公演日の演目と興行収入の記録を残した『帳簿』を手がかりとしてモリエール劇団の演目を分析的に研究することを目的として、平成10-11年度にかけては資料の収集ならびに、専門家の指導を仰ぐため渡仏し、パリ第12大学教授アラン・クプリ氏、トゥールーズ=ル=ミライユ大学教授クリスティアン・デルマス氏、パリ第4大学名誉教授ロジェ・ギシュメール氏、パリ第4大学教授ジョルジー・デュロゾワール教授などの指導を受けた。その成果として、モリエール研究誌le Nouveau Molieristeに論文Le spectacle en mouvement dans les deux premieres comedies en un acte de Moliere:Les Precieuses ridicules et Sganarelleなどを発表し、報告書「モリエール劇団の演目についての分析的研究---17世紀フランス演劇への新しいアプローチ」を作成した。この報告書においては、第一章でモリエール劇団の興行記録について各演劇シーズンごとの特徴をまとめ、第二章でコルネイユ兄弟の作品とモリエールの戯作との関係について論じた。第三章では、デマレ・ド・サン=ソルランの『真昼に夢見る人たち』の一場面がモリエールの『人間嫌い』(第二幕第四場)のエリアントの名台詞の源泉のひとつであることなどを示した。第四章では、モリエールのふたつの初期作品と、劇団がパリで興行を始めた時の演目の柱となった作品(トマ・コルネイユの『ドン・ベルトラン・ド・シガラール』、ゲラン・ド・ブスカルの『お殿さまサンシュ・バンサ』、スカロンの二つの喜劇、『ジョドレ、あるいは主人づらする召使』と『ドン・ジャフェ・ダルメニー』)との関係について詳しく分析を行った。報告書の巻末には、ラ・グランジュの『帳簿』の抄訳を附した。