著者
秋山 華穂 松浦 均 Akiyama Kaho Matsuura Hiroshi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice
巻号頁・発行日
vol.70, pp.187-197, 2019-01-04

現代の若者に広く浸透しつつあるコミュニケーション・ツールである“キャラ”に焦点を当て、その“キャラ”が実際にどのように用いられ、人間関係とどのような関連があるのかについて検討した。さらに“キャラ”を相手や状況に応じて切り替えることの効果、特に友人関係満足度に及ぼす影響について検討した。大学生を対象に、過去もしくは現在に所属していた友人グループの中での自身の“キャラ”を想起してもらい、その“キャラ”についての認知およびそのグループでの友人関係満足度について質問紙調査を行った。その結果、大学生が用いる“キャラ”の実態について、また“キャラ”と友人関係満足度および友人関係の特徴との関連について、“キャラ”切り替え動機と“キャラ”切り替えと友人関係の在り方や満足度との関連について明らかになった。具体的には、「お笑い」や「いじられ」キャラが多く用いられていることが明らかになった。また“キャラ”使用に関して性差がみられ、女性では「天然」「ほのぼの」キャラの数が多いのに対し、男性では「ボケ」や「お調子者」キャラが多くみられ、女性より男性の方が「キャラに対するメリット認知」をしていることが示された。さらに、「いじられ」や「お笑い」キャラと「まじめ」キャラとの間に、友人関係満足度などの差がみられた。これは、「友人関係における役割」キャラおよび「当人の性格特性」キャラの差異からくるものであることが考えられる。次に、友人関係の在り方の中では、特に「群れ関係群」において「キャラに対するメリット認知」が高く、それゆえ“キャラ”が多く用いられていることが示唆された。加えて、「キャラに対するメリット認知」は、友人関係満足度に影響を及ぼしているのに対し、「キャラに対するデメリット認知」は友人関係満足度との間に関連がみられないという結果が得られた。最後に、“キャラ”切り替えについては、「自然・無意識」を主な変化動機として行われている可能性が示された。そして、「友人関係における役割」キャラおよび「当人の性格特性」キャラにおける切り替えの程度によって、その切り替えは「関係維持」や「演技隠蔽」を変化動機として行われる場合もあるということが明らかになった。