著者
福森 大輝 松浦 均 Fukumori Daiki Matsuura Hitoshi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Social Science, Education, Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.35-45, 2022-07-29

本研究は,コロナ禍での若者の外出行動について,文化的自己観,同調志向,外出時に感じる罪悪感との関係から検討したものである。大学生160 名を対象に2021 年8 月1 日から同年9 月30 日までの期間でどこかに遊びに行ったり旅行に行った回数及び場所,そこに行く際に感じた罪悪感の程度,コロナ不安,コロナに対する意識,文化的自己観と同調志向を尋ねた。分析の結果,「感染不安」と「外出不安」,「相互独立的自己観」において性差が見られた。また,「日常生活不安」と「部活・サークル不安」から外出に対する罪悪感に影響が見られ,「外出不安」と「部活・サークル不安」から外出回数への影響が見られた。他者との関係性を重要視する人は,コロナに感染する不安よりも「周りの人がどう思っているのか分からない」ことや「他の人が自粛する中で自分だけが遊びに出ていることで他者から白い目で見られないか」という他者評価を気にして罪悪感を喚起していることが推測された。一方,規範やルールを重要視する人は,コロナへの態度や感染防止意識の高さが不安の高さに繋がっており,喚起される罪悪感も自身の不安の大きさに影響を受けていた。部活動やサークル活動参加者は,それに充てていた時間が空白になり,その時間の穴埋めや集団とのつながりや成員同士の関係性を保つため,不安や罪悪感を抱えながらも外出を行っていることが示唆された。
著者
秋山 華穂 松浦 均 Akiyama Kaho Matsuura Hiroshi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice
巻号頁・発行日
vol.70, pp.187-197, 2019-01-04

現代の若者に広く浸透しつつあるコミュニケーション・ツールである“キャラ”に焦点を当て、その“キャラ”が実際にどのように用いられ、人間関係とどのような関連があるのかについて検討した。さらに“キャラ”を相手や状況に応じて切り替えることの効果、特に友人関係満足度に及ぼす影響について検討した。大学生を対象に、過去もしくは現在に所属していた友人グループの中での自身の“キャラ”を想起してもらい、その“キャラ”についての認知およびそのグループでの友人関係満足度について質問紙調査を行った。その結果、大学生が用いる“キャラ”の実態について、また“キャラ”と友人関係満足度および友人関係の特徴との関連について、“キャラ”切り替え動機と“キャラ”切り替えと友人関係の在り方や満足度との関連について明らかになった。具体的には、「お笑い」や「いじられ」キャラが多く用いられていることが明らかになった。また“キャラ”使用に関して性差がみられ、女性では「天然」「ほのぼの」キャラの数が多いのに対し、男性では「ボケ」や「お調子者」キャラが多くみられ、女性より男性の方が「キャラに対するメリット認知」をしていることが示された。さらに、「いじられ」や「お笑い」キャラと「まじめ」キャラとの間に、友人関係満足度などの差がみられた。これは、「友人関係における役割」キャラおよび「当人の性格特性」キャラの差異からくるものであることが考えられる。次に、友人関係の在り方の中では、特に「群れ関係群」において「キャラに対するメリット認知」が高く、それゆえ“キャラ”が多く用いられていることが示唆された。加えて、「キャラに対するメリット認知」は、友人関係満足度に影響を及ぼしているのに対し、「キャラに対するデメリット認知」は友人関係満足度との間に関連がみられないという結果が得られた。最後に、“キャラ”切り替えについては、「自然・無意識」を主な変化動機として行われている可能性が示された。そして、「友人関係における役割」キャラおよび「当人の性格特性」キャラにおける切り替えの程度によって、その切り替えは「関係維持」や「演技隠蔽」を変化動機として行われる場合もあるということが明らかになった。
著者
吉田 卓司 松浦 均 YOSHIDA Takashi MATSUURA Hitoshi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.279-289, 2018-01-04

本研究では、高校生の学習上の援助行動である学業的援助授与およびその抑制態度の特徴を検討した。そのために授業内での援助行動を想定し、援助要請者を親しいクラスメイトおよびそれほど親しくないクラスメイトに区別して質問紙調査を行った。その結果、高校生の学業的援助授与には、放任的援助授与、熟考的援助授与、助言的援助授与が、その抑制態度には、回答への不安、理解不足による回答困難、要請者への抵抗感、人間関係への不安、説明への不安、能力感への脅威の存在が明らかになった。さらに「動機づけ-抑制態度-援助授与」の因果モデルを構築し、検討を行った結果、熟達目標は助言的援助授与に直接、または回答困難を媒介して熟考的援助授与に、遂行接近目標は人間関係への不安を媒介して、助言的援助授与に正の影響を与えることが明らかになった。また、遂行回避目標は、人間関係への不安を除く5つの抑制態度に正の影響を与え、一方、社会的コンピテンスは、要請者への抵抗感を除く5つの抑制態度に負の影響を与えることが明らかになった。援助要請者別の因果モデルにおいては、放任的援助授与に与える影響の違いなどが確認された。
著者
後藤 綾文 松浦 均 GOTO Ayafumi MATSUURA Hitoshi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.69-75, 2017-03-31

本研究の目的は、児童期から青年期にあたる小学生から大学生までの子どもを対象とした援助要請研究について、友人に対する援助要請を促進する要因という観点から整理することである。先行研究で扱われている援助要請に関わる概念を、操作的に援助要請意図、援助要請態度、援助要請行動の3つの概念に分類し、小学校、中学校、高等学校、大学という各学校段階ごとに概説した。その結果、どの学校段階にあっても、子どもを取り巻く周囲との関係性や周囲の価値観、子どもが所属する集団や組織、環境に関わる要因が、子どもの援助要請に関わっていることが示唆された。子どもの援助要請を促進する支援や実践を考えるうえで、今後は環境要因に注目し、援助要請者と援助者との相互の影響を明らかにする必要性を指摘した。