著者
秋永 紀子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.293-299, 2003-03-31 (Released:2011-01-31)
参考文献数
17

貴州省にはダイズの加工品であるトウフやナレズシなどの発酵食品があり, 日常的に食べられていた. そこで, 食文化から見た貴州省における伝統的な大豆の加工品および発酵食品について, 材料, 製法, 食べ方および分布等を調査した結果, 次のことが明らかとなった.1) トウフの製造過程で豆乳の抽出方法には, 貴州省のトウフ屋では, 一般に「生搾り」法で行われ, 凝固剤には主に石膏が使用されていた. 報京の同族の家庭では, 凝固剤に酸漿 (酸湯) が使用されていた.2) 貴州省には加塩発酵ダイズと無塩発酵ダイズの二種のナットウがあった. 無塩発酵ダイズであるナットウの分布は省都貴陽市や黔東南苗族・桐族自治州に見られた.3) 桐族や苗族はナレズシに使用する魚を脱水する方法として, 塩漬けおよび火に炙る方法を用い.漬け床として, 糯米に麹が使用され発酵させる方法と生の米粉 (糯米粉) を発酵させた「しとぎ」に漬ける方法があった. 報京の桐族の家庭では, 甕に「しとぎ」を入れ発酵させていた. この「しとぎ」は, 貴州省では日常的に調理して食べられていた.4) 少数民族は, 米のとぎ汁を発酵させた酸湯を常備し, トウフの凝固剤やスープおよび漬物の調味料として使用していた.