- 著者
-
森 美佳
秋田 美恵子
梅沢 陽太郎
足利 朋子
山下 敦己
長江 千愛
山崎 哲
高山 成伸
金子 英恵
那和 雪乃
松井 宏晃
瀧 正志
- 出版者
- 学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
- 雑誌
- 聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.3, pp.207-215, 2017 (Released:2017-12-04)
- 参考文献数
- 25
背景:ステロイドと血栓症の関連は未だ不明点が多い。我々は免疫性血小板減少症(ITP)におけるメチルプレドニゾロン(m-PSL)パルス療法前後での凝固因子の変化と,ヒト肝癌細胞株HepG2細胞を用いたm-PSLによる凝固因子遺伝子mRNA発現量の変化を検討し,m-PSLによる凝固亢進状態形成機序を考察した。方法:m-PSL(30 mg/kg/dose)を経静脈的に体内に3日間投与したITP症例(n=3)において,投与前と投与終了翌日にフィブリノゲン,プロトロンビン,凝固第V,VII,VIII,IX,X,XI,XII因子活性の変化を観察した。またm-PSL(100 μM)添加HepG2細胞における凝固因子遺伝子mRNAを定量RT-PCRにて測定した。結果:ITP症例ではm-PSLパルス療法後に第VIII因子活性の上昇(p=0.00064)を認めた。HepG2細胞では第XI因子遺伝子mRNAは有意に低下した(p=0.044)が,その他mRNA発現量の変化を認めた凝固因子遺伝子はなかった。考察:本研究結果はm-PSL投与後のFVIII: C増加が凝固亢進状態形成に関与する可能性を示唆する。しかしITP患者での凝固因子活性変化とHepG2細胞での凝固因子遺伝子mRNA発現量の変化は一致せず,m-PSLによる凝固亢進状態形成機序の解明には更なる検討を要する。