著者
秋田 美緖
出版者
芸術学研究会
雑誌
芸術学論集 (ISSN:24357227)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.21-30, 2021-12-31 (Released:2021-12-29)
参考文献数
14

本論は埼玉県川口市におけるアーティスト・イン・スクールの実践について、学校教育という観点から、更に学校と美術施設が連携して行われる美術教育の可能性を探るという観点から、評価・分析を試みるものである。対象事業は2006年から同市内に位置する川口市立アートギャラリー・アトリアが企画しているもので、美術活動を行うアーティストが小中学校の図画工作科・美術科の授業に講師として派遣され、一単元分の授業の中で制作と発表展の指導を行うものである。筆者は2011年からこの実践にコーディネイターとして関わっている。1.では、本論の主旨・目的を明らかにする。次の2.では川口市立アートギャラリー・アトリアの概要を踏まえ、アーティスト・イン・スクールが施設の事業としていかに位置付けられているかを述べる。3.では、最新の実施例(2019年、小学校で実施)を対象に、事業概要と目的、学校内で行われた授業の流れを追う。授業がいかに計画されたか、講師・教員・コーディネイターがどのような役割を果たしていたかなどを詳細に述べる。それらを踏まえた上で、4.では、授業に参加した児童と教員から聞かれた意見・感想を分析し、プログラムの教育的効果を見出すことを試みた。授業参加者の意見・感想からは、講師の介在によって教員と児童の関係が変化したことが読み取れた。講師が考案した挑戦的内容を含む授業で児童の姿勢が変化し、それを観察する教員の視点も変化している。更には、コーディネイトを手がける美術施設で行われる発表展がもたらす影響として、講師と教員の考え方の違いが明確化する点がある一方で、児童が作品を鑑賞する・発表する効果がある点が明らかになった。