著者
秋谷 かおり
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.149-158, 2004-07-25

左室駆出動態が末梢動脈血流に及ぼす影響を明らかにする目的で,弁膜症例について頸動脈血流と左室駆出血流速度波形との関係を検討した.対象は弁膜症患者104例(平均年齢62±13歳),内訳は,大動脈弁閉鎖不全症37例,大動脈弁狭窄症17例,僧帽弁閉鎖不全症31例,僧帽弁狭窄症19例である.対照は,拡張型心筋症32例,肥大型非閉塞性心筋症12例とした.計測は,心エコー図検査と頸動脈エコー図検査を行い,左室駆出分画,心係数,1回抽出係数,平均左室円周方向心筋線維短縮速度,総頸動脈径,左室流出路ピーク駆出血流速度(LV Flow),総頸動脈ピーク収縮期血流速度(Car Flow)を計測した.大動脈弁狭窄症を除く全ての患者はLV Flowが速くなるほどCar Flowも速く,両者に正相関がみられた.大動脈弁狭窄症はLV Flowは速いほどCar Flowは遅く,両者は負の相関関係がみられた.また,大動脈弁狭窄症では弁狭窄が重症例ほどCar Flowは低下していた. Car Flowに弁膜症における左室駆出血行動態を反映した.