著者
梅澤 明弘 秦 順一
出版者
国立成育医療センター(研究所)
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

TERT、E6、E7、およびBmiを遺伝子導入することにより寿命を延長したヒト骨髄間葉系幹細胞を用いてin vitroとin vivoにおいて心筋に分化するかどうかを検討する。ヒト骨髄間葉系細胞を限外希釈法でサブクローニングをして得られた細胞に、レトロウィルスを用いてTERT、E6、E7、およびBmiを遺伝子導入した。得られたヒト寿命延長骨髄間葉系幹細胞をGFPで標識し、マウス胎児心筋細胞と共培養することで心筋へ分化させ、さらに免疫組織化学を用いて抗心筋トロポニン抗体で評価した。また、免疫不全マウスの心筋にヒト寿命延長骨髄間葉系幹細胞を注射し、心筋への分化を免疫組織化学により評価した。in vitroでGFP陽性細胞は2日後に筋管細胞様に延長し、7日後には拍動する細胞を認めた。免疫組織化学では抗心筋トロポニン抗体陽性であった。また、in vivoにおいても抗心筋トロポニン抗体と抗β2ミクログロブリン抗体陽性の移植細胞が認められた。以上のことより、寿命延長したヒト骨髄間葉系幹細胞は心筋に分化し得ると結論づけられる。心筋細胞がin vitroで大量に確保できるという状況が現れれば、それらの細胞を用いた細胞移植という方法論で、末期重症心不全の治療に用いることが可能であろう。In vivoにおいて、胎児心筋細胞を用いて心臓への移植の可能性が証明されて以来、遺伝子を導入した細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、無処置の骨髄細胞などがドナー細胞として用いられてきた。また、胎児性幹細胞を用いた実験も報告されているが、倫理的な問題を含んでいる。