著者
吉川 裕之 八杉 利治 高塚 直能 前田 平生
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

子宮頸がん患者と健常者対照を比較する症例対照研究が進行中であるが、今回は、子宮頸がん患者と子宮頸部異形成(CIN1/2)者におけるHLA遺伝子多型の比較を行い、子宮頸がんにおけるHLA遺伝子多型のリスクを明らかにすることを目的とした。本研究は国内9施設における多施設共同研究である。目標数は子宮頸がん症例400例、対照400例で平成21年12月までの登録を予定している。平成20年2月時点で子宮頸がん患者登録数は80名である。現段階では、健常人の対照との比較ができる段階ではないので、過去のコホート研究で、同一9施設で採取したCIN I/II(前癌病変)患者454名を対照として解析を行った。1) HLAクラスIIアレルの地域差保有率の地域差を認めたのは DRB1*0301、DRB1*0405、DRB1*0803、DQB1*03、DQB1*0401、DQB*0601、DQB*0602であった。2) 子宮頸癌患者(Case)とCIN I/II患者(Control)でのHLAクラスIIアレルの差CaseとControl群間で差が認められたのはDRB1*1302、DQB1*0604であった。さらに、子宮頸がんに対するHLA遺伝子多型のリスクを明らかにするため、通常のロジスティック回帰分析と地域でマッチさせた条件付ロジスティック分析によりオッズ比を求めた。子宮頸がんリスクを上げるHLAタイプとしてDRB1*0701とマージナルではあるがDQB1*0202が、またリスクを下げるタイプとしてDQB1*0604とマージナルなものとしでDRB1*1302の関与が示唆された。これらの中で、CIN I/II の CIN IIIへの進展を阻止するものとして有意であったDRB1*1302は、今回の症例対照研究でも子宮頸がん患者に有意に少ないことが判明した。
著者
二階堂 善弘 吾妻 重二 千田 大介 山下 一夫 志賀 市子 濱島 敦俊
出版者
関西大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

浙江・江蘇一帯の道教や民間信仰における廟・祭神・儀礼の実態について調査を行った。またこれらが華南一帯や、日本などにも影響を及ぼしている状況についても調査した。特に、日本の禅宗文化に与えた影響に注意して検討を行った。
著者
酒井 邦嘉
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

左前頭葉の一部「文法中枢」に脳腫瘍がある患者で純粋な文法障害が生じることを実証しました。左前頭葉に脳腫瘍を持つ患者に文法判断テストを実施し、その腫瘍部位を磁気共鳴映像法(MRI)で調べたところ、左前頭葉の一部である「文法中枢」に腫瘍がある患者では、左前頭葉の他の部位に腫瘍がある患者より誤答率が高くなりました。臨床的には失語症と診断されていないにもかかわらず、今回のように顕著な文法障害(「失文法」)が特定されたのは初めてのことです。
著者
江口 浩二 大川 剛直
出版者
神戸大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

情報爆発時代と呼ばれる今日、インターネット上に発信された情報は, 発信者にも制御不能な形で流通することが少なくなく、一旦流通したこれらの情報はアンドゥーすなわち発信される前の状態に戻すことは通常不可能である。また、これらは膨大な他の情報に埋没しがちであるため、既存の手段で探し当てるのは容易でない。本課題では、とくに、人物や組織等に対する誹謗中傷、ならびに、災害、事故、事件などの風評に着目し、それらの発見を支援するための技術基盤として、情報検索および情報追跡手法を開発する。平成20年度は主に以下の基本技術の開発に取り組んだ。1.逐次的に配信される文書系列に対するトピック追跡問題のため、情報理論に基づく語の重みづけ法を開発し、従来手法と比較して有意な改善を実現した。2.ブログポスト間のハイパーリンクとブログボストの潜在トピックに着目して、ブログ空間における情報伝搬を解析する手法を開発し、現実のプログデータを用いた評価実験によって有効性を示した。3.人物名や地名などのエンティティ(固有表現)がタグ付けされた文書の集合から、エンティティ間の関係を示すネットワークを推測する手法を実現した。4.タグで構造化された文書の集合から推定した潜在トピックに基づいて、構造化文書を効果的に検索する手法を実現した。Wikipediaデータを用いた評価実験によって提案手法の有効性を示した。5.マルコフ確率場モデルに基づく語間依存性のモデルにより、自然言語文で表現された質問から構造化クエリを構築し、高精度なWeb検索を実現した。
著者
西條 辰義 下村 研一 蒲島 郁夫 大和 毅彦 竹村 和久 亀田 達也 山岸 俊男 巌佐 庸 船木 由紀彦 清水 和巳
出版者
高知工科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007-07-25 (Released:2007-04-01)

特定領域「実験社会科学」の研究者のほとんどがその研究成果を英文の学術雑誌に掲載するというスタイルを取っていることに鑑み, 社会科学の各分野を超えた領域形成が日本で始まり, 広がっていることを他の日本人研究者, 院生などに伝えるため, 和書のシリーズを企画し, 勁草書房の編集者と多くの会合をもち『フロンティア実験社会科学』の準備を実施した. 特定領域におけるステアリングコミッティーのメンバーと会合を開催し, 各班の内部のみならず, 各班の連携という新たな共同作業をすすめた. 方針として, (1)英文論文をそのまま日本語訳するというスタイルは取らない. (2)日本人研究者を含めて, 高校生, 大学初年級の読者が興味を持ち, この分野に参入したいと思うことを目標とする. (3)第一巻はすべての巻を展望する入門書とし, 継続巻は各班を中心とするやや専門性の高いものにする. この方針のもと, 第一巻『実験が切り開く21世紀の社会科学』の作成に注力した. 第一巻では, 社会科学の各分野が実験を通じてどのようにつながるのか, 実験を通じて新たな社会科学がどのように形成されようとしているのかに加えて, 数多くの異分野を繋ぐタイプの実験研究を紹介した. この巻はすでに2014年春に出版されている. 継続の巻も巻ごとで差はあるものの, 多くの巻で近年中に出版の見込みがついた. さらには, 特定領域成果報告書とりまとめを業務委託し, こちらも順調にとりまとめが進んだ. 以上のように本研究は当初の目標を達成した.
著者
石村 真一 平野 聖
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

本研究の対象は、電気扇風機、テレビの2機種とする。電気扇風機に関しては、明治期から昭和40年代初頭までの文献史料、特許及び意匠権資料調査、日本国内及びヨーロッパのフィールド調査、テレビに関しては、松下電器産業株式会社の社史編纂室等の社内資料を通して調査した結果、次の内容が明らかになった。(1)電気扇風機の開発と発達日本の電気扇風機は、従来主張されてきた芝浦製作所が第1号を製作したのではなく、別の小規模の会社が先に開発したことが、明治10年代の新聞広告より確認された。明治末期あたりから芝浦製作所が量産体制に入るが、モーターは輸入品であった。大正中期になると三菱等の他のメーカーも電機扇風機の開発に乗り出し、海外のメーカーと提携してモーターの国産化を進めていく。大正後期にはレンタルの電気扇風機も出現し、国産電機扇風機の割合が増加する。それでも海外からの輸入品の方が多かった。昭和初期からガードの意匠権申請が多くなり、戦後までこの傾向が続く。電気扇風機のカラー化は戦後間もない時期から始まり、昭和20年代後期には定番化する。昭和30年代前半には高さの調節できる機能が加わり、電気扇風機の基本的な機能はこの時代に確立される。(2)テレビの開発と発達日本のテレビは昭和20年代後半に開発され、当初はブラウン管を輸入して17インチから出発した。また全体の形態は台置き型であった。ところが、昭和30年代前半には、4本脚型で国産のブラウン管を使用した14インチのテレビが主流になる。昭和30年代中葉には、カラーテレビも開発される。しかし、高価であったため、昭和30年代後半になっても普及しなかった。昭和40年あたりからコンソールタイプの家具調テレビが開発され、昭秘40年中葉には和風のネーミングと共に、カラーテレビとして広く普及した。
著者
福島 甫
出版者
東海大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

本研究申請時に比べ物質輸送モデルの研究が進み、黄砂降下量が一定精度で推定できるようになったこと、また衛星データが蓄積され、「年々変動の解析」がやりやすくなったことを勘案し、研究の重点を「鉄供給源と見なされている黄砂の沈着量と植物プランクトン量(衛星によるクロロフィル濃度推定値)」の関係の解析に移した。併せて東アジア域における大気汚染に関連する指標として、過去12年間にわたる日本近海におけるサブミクロン粒子の増減傾向に関する衛星データ解析を行った。(1)北太平洋における黄砂沈着量分布とクロロフィル濃度の関係に関する解析九大・竹村俊彦らのエアロゾル放射伝達モデルSPRINTARSによる最近13年間の北太平洋黄砂沈着量データと、MODIS・SeaWiFSデータによるクロロフィル濃度データの比較解析を北緯20~69°における北太平洋域の各小海域(緯度・経度各4°幅)について行った。黄砂沈着量とクロロフィル濃度については月間平均値・週間平均値(1・2週間の時間遅れ含む)どうしの直接的な相関を見いだすことはできず、年度内に成果としてまとめることはできなかった。しかし解析を通じて新たな着想が得られたので、引き続き解析を続ける予定である。(2)日本近海における小粒径エアロゾル増加傾向の解析1998~2009の期間の日本近海におけるSeaWiFSデータの独自再解析を行い、Aqua/MODISデータと重複する期間については両者の解析結果がよく一致すること、さらにこの間の小粒径粒子の割合が2006年頃を境に増加から減少に転じることを確認した。SPRINTARSによるモデル計算結果および「立山におけるサブミクロン粒子の体積濃度」の時系列データとの比較検討に関して本特定領域研究のA01班内の九大・鵜野および名大・長田と討論し、共同の成果としてとりまとめつつある。
著者
若山 照彦
出版者
山梨大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤を用いてクローン技術の成功率を改善することに成功し、この技術を用いることで16年間凍結保存されていた死体からのクローンマウスの作出に成功した。一方、従来再クローニングには限界があると言われていたが、この技術により再クローンを25回以上繰り返すことに成功し、1匹のドナーマウスから600匹ものクローンマウスを作ることに成功した。初期化異常は蓄積されないことが初めて示された。
著者
丹羽 仁史 山中 伸弥 升井 伸治 中尾 和貴
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

これまでに本研究において同定と機能解析を進めてきた遺伝子群について、マウス胎児性ならびに成体性線維芽細胞における多能性誘導能を網羅的に解析した。この結果、Oct3/4,Sox2,Klf4,cMycの4因子の組み合わせにより、これらの線維芽細胞に多能性を誘導することが可能であることを明らかにし、報告した(Takahashi, K. and Yamanaka, S., Cell, 2006)。さらに、これら4因子のうち、マウスES細胞における機能が明らかでなかったSox2とKlf4について、その解析を進めた。まず、Klf4については、これがES細胞に於けるLefty1プロモーターの活性化においてOct3/4およびSox2と協調的に働くことを明らかにした(Nakatake, Y. et al., Mol.Cell.Biol., 2006)。また、Klf4の強制発現が、マウスES細胞のLIF非依存性自己複製を維持しうることも見出している。一方、Sox2については、その機能がマウスES細胞の自己複製に必須であり、Sox2機能喪失は栄養外胚葉への分化を誘導すること、そしてSox2のマウスES細胞における主たる機能はOct3/4の転写活性維持にあることを明らかにした(Masui, S. et al., Nat.Cell.Biol., in revision)。さらに、マイクロアレイ法を用いた解析により、Oct3/4の標的遺伝子候補を網羅的に同定し(Matoba, R et al., PLoS One, 2006)、Klf4ならびにSox2の標的遺伝子についても同様の解析を進めることにより、マウスES細胞に於ける遺伝子発現制御の全体像を明らかにすることを現在試みている。
著者
西原 真杉
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

哺乳類における脳の性差は、発生過程の特定の時期(臨界期)に脳がアンドロジェンに曝露されるか否かによって生じる。アンドロジェンは脳内の細胞において芳香化酵素によりエストロジェンに代謝され、エストロジェン受容体と結合して特定遺伝子群の転写を活性化することにより脳の性分化を誘導する。我々は、齧歯類の周生期の脳において性ステロイド依存性発現の高まるグラニュリン遺伝子が、脳の雄性化に関与していることを示している。本研究においては、グラニュリン・ノアウト(KO)マウスを用いて、グラニュリンによる脳の性分化の誘導機序について検討を行った。不安傾向を検討した結果、野生型(WT)マウスにおいて雄は雌と比較すると不安傾向が低いという性差の存在が示された。一方、KOマウスにおける雄不安傾向はWTの雄より高く、雌とほぼ同じレベルであった。青斑核は不安様行動への関与が示唆されているが、青斑核の体はWTマウスでは雄に比べて雌の方が大きい傾向が見られ、KOマウスでは雌雄のWTマウスよりも有意に大きくかつ性差も認められなかった。グラニュリンは青斑核の発達を抑制することで形態学的な性差を形成し、不安傾向の性差を発現させていることが示唆された。さらに、周生期のWTマウスおよびKOマウスの視床下部における遺伝子およびタンパク質の網羅的発現解を行い、グラニュリンの下流に存在する分子の同定を試みた。その結果、LIMホメオボックス遺伝子Lhx1およびやはりLIMドメインを持つタンパク質であるLASP1の発現がKOマウスにおいて減少していた。これらの結果より、神経細胞の分化や発達関与していると考えられているLIMドメインをもつタンパク質がグラニュリンの機能発現に関与していることが示唆された。
著者
花川 隆
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

タイミングの認知と生成は系列行動の最も重要な基本要素の一つである。タイミング認知・生成に関わる脳領域と領域間の機能連関を明らかにするため、健常成人14名においてfMRI研究を行った(Aso et al. in press)。被験者は、数百msの刺激間隔(ISI)で提示される視覚刺激のISI長短判定(タイミング認知)、提示された刺激のISIを二回のボタン押し運動として再生(タイミング再生)する課題を行った。対照条件として、視覚刺激のサイズの大小判定課題とボタンの即時押し課題をそれぞれ用いた。fMRIは3テスラ装置を用いたエコープラナーイメージ撮像により行った。タイミング認知と再生は、それぞれの対照条件との比較において、共通して前頭前野、島皮質、下頭頂葉から上側頭回、小脳の有意な活動増加を伴った。また小脳の活動はタイミング認知課題において右半球、タイミング再生課題において左半球でより著明であった。これら小脳のタイミング認知・再生における活動は、大脳皮質と小脳が形成する神経回路の機能を反映すると仮定し、小脳の活動部位をシード領域として用いるpsycho-physiological interaction解析を行った。その結果、小脳活動との相関が課題依存性に変化する部位としてSMAが同定され、このSMA領域はタイミング認知課題の際に右小脳と、タイミング再生課題の際に左小脳と大きな相関を示していた。タイミング認知と再生機能に、SMAと小脳の機能連関が重要であることが示された。この結果は、タイミングの認知と生成がともにSMAと小脳が構成する神経回路の機能に依存していることを示唆する。再生の場合、SMAが生成する運動計画指令に基づき、小脳が次に運動を生成すべきタイミングを予測していると考えられるが、タイミング認知の際にも同じ回路が使われていると解釈できる。
著者
伊永 隆史 尾張 真則 竹内 豊英 内山 一美
出版者
首都大学東京
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003 (Released:2003-04-01)

化学実験に用いる器具・装置類のダウンサイジングは、今日マイクロ〜ナノテクノロジーの一研究分野として世界的に重要性が認識されてきたマイクロ化学システムを利用し、ガラス実験器具・装置の微小モノづくりによる環境負荷最小化を目的に、サンプルの前処理,反応,分離,検出など実験室・研究室で行われている化学操作をすべてマイクロチップやマイクロリアクター上に構築するものである。化学操作をダウンサイジング化することにより、化学実験の小スケール化による合理的な環境負荷低減・リスク低減を、実験効率を大きく低下させないで実現可能な環境安全教育に適用することを目標として化学実験器具のダウンサイジングによる実験教育手法の開発を行った。大学等でHPLC装置・システムを研究実験に使用するところは多く、廃棄有機溶媒の環境に対する負荷削減を目的に検討したが、実験者に対する曝露リスクの低減効果を考えると、分離カラムのダウンサイジングはきわめて費用対効果は大きい。現在全国で稼働中のHPLCシステムをモノリス型カラムに置き換えることに対し抵抗感が無くなれば、HPLC稼働に伴う溶媒消費量を1/1000近くに低減できることがわかった。ダウンサイジングによる環境安全教育を標準化し、モノリス型カラムLC組み立て実験、化学工学スケールダウン実験、小スケール有機反応実験などのダウンサイジング化学実験事例を取り入れた実験指導教育が望まれることを認めた。中学・高校および大学一般教育・専門教育で行われる基盤的化学実験においては、適切な実験を経験する機会をできるだけ多く与えることが重要で、実験教育による環境負荷や曝露リスクの低減等の課題を解決できるダウンサイジング化学実験法の構築が有望であるため、実験効率を大きく低下させることなく、種々の実験テーマに適用可能なように標準規格化することが今後の課題である。
著者
原田 一敏
出版者
独立行政法人国立博物館東京国立博物館
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

自在置物は、動物や昆虫など、それらが本来的に持っている体を動かせる機能までも動かせるように作った置物である。本研究は、自在置物の歴史の探求と、それがいかにして動かすことができるかを理解するための復元にある。歴史の研究については、昨年度、メトロポリタン美術館、フライングクレインアンティークス、オリエンテーションギャラリー、ボストン美術館、ヒギンス・アーマリー博物館など海外の作品を調査したが、17年度は日本国内の遺品調査に重点を置いた。石川県立美術館では蛇、佐賀県鍋島報公会では龍、清水三年坂美術館では鯉、鯱、蝉、かまきり、蝶、蜂、カミキリムシなど総計で15点調査をするとともに、写真撮影を行った。これらの調査により明珍性の甲冑師の作品については、作者によって得意とする分野があり、たとえば明珍宗長は手長海老やヤドカリ、明珍吉久は鯉を複数製作していることなどが確認できた。また京都の高瀬好山工房の歴代の作家の作品を知ることができた。復元的研究については、16年度、明治時代以来自在置物を作っている工人の家に生まれた京都在住の冨木章(工人名は宗行)氏に伊勢海老の部品の制作を依頼するとともに、その制作過程を映像記録した。17年度はその完成品の制作を依頼し、完了した。これによって伊勢海老については、その制作法が明らかとなり、今後鍛金、彫金の専門家であれば、だれでもこの伊勢海老が作れることとなり、技術の伝承が可能となった。
著者
田丸 浩
出版者
三重大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

本研究では、ゼブラフィッシュをモデル動物として、受精卵(1細胞)からの発生・分化過程という「時間的・空間的な動態」におけるミリスチル化脂質修飾酵素ならびにその標的タンパク質を介した時空間動態の定量的解析法の確立を目指した。最終年度となる今年度は、ミリスチン酸(myr)-グリシン(Gly)残基に対する抗体を作製し、ミリスチル化ペプチドに対する抗体の免疫学的力価の検討を行った。その結果、50ng以上のミリスチル化ペプチドに対して直線的な相関が得られた。さらに、大腸菌発現系を用いてゼブラフィッシュzNMT1遺伝子の組換え体酵素を精製し、標的ペプチドに対するミリスチル化の反応産物を質量分析器を用いてMyr付加の有無を検討した。その結果、組換えzNMT1は標的ペプチドをミリスチル化し、ミリスチル化ペプチドに予想通りの分子量の変動が確認された。最後に、ゼブラフィッシュ遺伝子発現系を用いて蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によるタンパク質間相互作用について検討を行った。当研究室で開発したpZexベクターならびに全身細胞で発現するpXIを組み合わせて、孵化腺細胞におけるFRETを観察した。その結果、受精後24-48時間において強いFRETが観察され、高等動物におけるタンパク質間相互作用解析が可能となった。今後は、発現が困難である膜タンパク質についてのミリスチル化とタンパク質間相互作用解析を組み合わせることで、タンパク質ミリスチル化が関与する生命現象の解明を進めていく予定である。
著者
落合 謙太郎 佐藤 聡 近藤 恵太郎
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

ブランケットによる燃料トリチウム自己供給技術の確立は核融合炉達成の必須条件であり、技術開発には生成から回収までのトリチウム循環に関する特性の解明が必要である。本研究ではDT中性子源による核融合炉ブランケット増殖材照射実験を実施し、増殖材から回収されたトリチウム量を測定することで、増殖材料からのトリチウム回収性能を明らかにし、核融合炉トリチウム増殖回収技術に必要な工学データの取得と設計課題の解決について貢献することを目的としている。原子力機構FNSでのDT中性子照射によるトリチウム回収実験の測定システムを用いて回収性能の試験を実施した。実験の具体的な手法は、固体増殖ブランケットの最有力中性子増倍材であるベリリウム体系(直径63cm、厚さ45cm)のほぼ中心にステンレス角柱で囲まれたヒーター付のアッセンプリ中にペブル状の増殖材(Li2TiO3)を挿入し、DT中性子源にて照射しながらトリチウム回収量を評価するものである。さらに照射時オンライン回収実験の準備を開始し、リボルバー式のバプラー切換装置を導入し、スイープガスの水分計測定、コールドトラップや酸化銅ベットの調整を行うことで、水形(HTO)ならびにカス形(HTやT2)成分分離で時間分解が可能な回収トリチウム測定システムを構築した。平成23年度は、震災により、原子力機構核融合中性子源(FNS)による照射ができなかったため、次年度の平成24年度に上記のトリチウム回収実験を改めて実施した。増殖材温度300℃と600℃のHTOとHTの分離回収測定から、トリチウム生成量の95%以上を回収できることが解った。また温度によるHTO回収量とHT回収量の違いがあることが明らかとなった。さらに時間分解測定の結果からガス系の回収は照射開始から遅れて回収されることがわかり、生成から回収までの時間が数時間必要であることが明らかとなった。
著者
松澤 佑次 船橋 徹 斉藤 昌之 矢田 俊彦
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003 (Released:2003-04-01)

本研究は脂肪細胞機能を解析し過栄養を原因とする動脈硬化、糖尿病、癌戦略を打ち立てんとするものである。(1)脂肪細胞の起源と発生分化:生体の三次元的な組織変化追跡法が開発され、血管新生が脂肪組織増大に必須であること、単球接着など動脈硬化巣と類似した変化が肥満脂肪組織におこることが示された。侵入したマクロファージはアディポサイトカイン分泌に影響を与え、脂肪組織リモデリングという現象が起こる。局所酸化ストレス物質や低酸素状態がアディポサイトカイン分泌異常をおこすことも明らかになった。(2)脂肪細胞の基本生命装置:アディポソームと呼ぶ膜小胞が新たな分泌機構として明らかにされた。著しく変化する脂肪細胞容積感知分子として容積感受性クロライドチャネルが同定された。水チャネル分子であるアクアポリンが脂肪細胞グリセロール分泌に関与し、その欠損により飢餓時の糖新生不足がおこり低血糖をきたすことを示され脂肪細胞におけるグリセロールチャネルの概念が確立された。(3)機能破綻による病態発症機構の解明とその制御:アディポネクチンの生理的意義に関する多くの研究成果が得られ、単に代謝性疾患にとどまらず、循環器疾患、消化器疾患、炎症性疾患、さらには腫瘍など、主要な疾患と生活習慣の関連を解明する上で大きく貢献し、アディポネクチン学(Adiponectinology)という一つの学問分野を形成するに足るものとなり、わが国から世界に向けた大きな発信となった。以上より、多分野の研究者が参入し脂肪細胞生物学(アディポミクス)という分野が急速に立ち上がった。本領域研究は科学領域に大きな成果をもたらしたと考えるが、加えて国家的課題となっている多くの生活習慣病対策に対し、メタボリックシンドローム概念確立の科学的基盤の一つとなったと考える。
著者
植田 和弘 森 晶寿 高田 光雄 浅野 耕太 諸富 徹 足立 幸男 新澤 秀則 室田 武 新澤 秀則 足立 幸男
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

本研究領域は、持続可能な発展論と環境ガバナンス論を重層性に着目して統合的に再構成し、持続可能な社会を実現するための理論的基礎と実践的指針を確立するという極めて実践的な問題意識を持ってすすめた。個々の研究成果を理論的・実現的に蓄積させ有機的に結合することにより、従来にない先導的で基盤的な意義を有する研究成果としてまとめた。さらに、これまでに得られた学術的研究成果を基に、最終報告書として5巻にのぼる英文学術書を取りまとめた。そのうち2巻については出版し、残り3巻についても編集作業がほぼ完了した。留意した点はいかのとおりである。昨年度までに国内外で開催された国際会議や学会において研究成果を公表してきたが、そこで得られたコメント等は本領域研究の問題意識と方法等に対しておおむね好意的であった。さらに、本領域の学術的価値を適切に評価し、国際的な評価を受けるべく適宜アドバイスを求めてきた国内外の有力研究者からの指摘は本領域研究のオリジナリティに関して高い評価を得ており、その核心部分と改善に向けての示唆を最終報告書である英文学術書5巻に反映させた。国際学術誌や国内学会誌に掲載された研究成果も多数にのぼるが、それらのエッセンスに加えて中間報告書に対する論評も考慮して、本領域研究の成果を総体として持続可能な発展の重層的環境ガバナンスに関する理論的実証的体系としてまとめた。そして、その成果を国際的に発信すべく英文で出版した。また、領域研究全体としての成果を、速やかに社会に提供できる環境を構築するべく、インターネット・ウェブ・ページを開設し、外部から自由にアクセスできるようにした。これにより、国内外を問わず、この領域に関心を示す研究者とコミュニケーションに基づく批判的吟味を受け討議を行うことが可能となった。
著者
肥前 洋一 蒲島 郁夫 船木 由喜彦 河野 勝 谷口 尚子 境家 史郎 荒井 紀一郎 上條 良夫 神作 憲司 加藤 淳子 井手 弘子
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

領域全体の主題である実験社会科学の確立に向け、政治学分野の実験研究を発展させた。具体的には、実験室実験・fMRI実験・調査実験を実施して「民主主義政治はいかにして機能することが可能か」という課題に取り組むとともに、政治学における実験的手法の有用性を検討する論文・図書の出版および報告会の開催を行った。
著者
加藤 徹 上田 望 竹本 幹夫 細井 尚子
出版者
明治大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

本研究は、特定領域研究「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成」の中の「演劇班」として、日本と中国に残存する演劇・芸能の調査研究を行った。具体的には、(1) 古代(7c頃)以降の散楽の源流(2) 中世(14c頃)以降の寧紹地域の演劇の伝播(3) 近世(18c頃)以降の明清楽の日本伝来の三つを中心に調査研究を行い、東アジアの芸能が「いつ、どのようなルートで、どのような要因によって伝播したか」を考察した。
著者
河内 敦
出版者
広島大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

われわれが先に開発した[o-(フルオロジメチルシリル)フェニル]リチウムとジクロロゲルミレン・ジオキサン錯体との反応により, ゲルマニウム上にo-(フルオロジメチルシリル)フェニル基を二つ有するベンゾシラゲルマシクロブテン1が生成した。化合物1にテトラヒドロピラン中, [2. 2. 2]クリプタンド存在下でフッ化カリウムを作用させると, フッ化物イオンがケイ素原子上を攻撃することでゲルマニウムーケイ素結合の切断が起こり, ゲルミルポタシウム2が選択的に生成した。X線結晶構造解析の結果, 2は求核部位であるゲルミルアニオンの周りを求電子部位であるフルオロシラン三つが取り囲むという特異な構造を有していることが明らかとなった。このように求核部位と求電子部位とが接近していながら, 反応せずに安定に存在していることは驚くべきことであり, 求核性・求電子性の本質を明らかにする上で重要な知見といえる。さらに, 2にBF_3・Et_2Oを作用させると今度は分子内求核置換反応が促進され, ベンゾシラゲルマシクロブテン1が再生した。これは, ホウ素原子の空のp軌道とフッ素原子の非共有電子対とが相互作用することで, σ*(Si-F)軌道のエネルギーレベルが低下し, ケイ素原子上が求核置換反応を受けやすくなったためと説明できる。以上のようにわれわれは, 14族元素間結合の切断-再結合を制御することにより, ベンゾシラゲルマシクロブテン環を可逆的に開環-閉環させることに成功した。このような14族元素間結合の可逆的な切断-再結合反応は過去に類を見ないものである。