著者
種田 元晴
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.31-40, 2020-01-31

長きにわたって学校法人文化学園を象徴する建築物であった「文化服装学院円型校舎」は、円形校舎が各地に 相次いで建てられ、建築界を賑わした時代に竣工した。その先駆例は、文化服装学院の前年に竣工した「山崎学園富士見中学・高等学校」であった。富士見中学・高等学校は、坂本鹿名夫の設計による。坂本は以降、数多くの円形校舎を手掛けた。しかし、「文化服装学院円型校舎」は坂本の手によるものではなく、三菱地所の杉山雅 則の設計である。本稿では、坂本による円形校舎と「文化服装学院円型校舎」の形態構成と空間構造を比較する ことにより、その共通点および差異を検証した。その結果、「文化服装学院円型校舎」は、坂本鹿名夫による実 用新案である円形校舎がつくられた時期に、坂本の承認を得て、坂本の考案した円形校舎の利点を取り入れなが ら計画されたものであることが明らかとなった。また、坂本による一連の円形校舎が経済性を追究し、合理性を満たすことを目的とした建築であったのに対し、「文化服装学院円型校舎」は仕上げや設備を高級に設えた象徴 性の追究された建築としてつくられたものであり、両者は設計趣旨のまったく異なったものであることが明らかとなった。