著者
浅見 高明 石島 繁 種谷 明美
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.35-46, 1983
被引用文献数
3

本研究は、大学競技選手の意識的、機能的・側優位性(利き側)を二種類の研究手段で考察しようとした。その第一は、アンケート調査による方法で、筑波大学体育専門学群の競技選手443名の利き手、利き足、利き体側、利き目の調査をした。第二は、そのうちの男子320名について運動機能テストを実施したものである。調査カードは手・足・体側・目の優位側を50項目についてきくものである。また運動機能テストは、1)握力、2)腕力、3)タッピング、4)針糸通し、5)狙準検査、6)脚力、7)閉眼棒上片足立、8)ステッピング、9)丸鉛筆拾い、10)体捻転の10種目である。そして14種目の競技選手について10項目の運動機能テストの平均値を比較検討した。(1)アンケート調査の結果は次のようである。利き手意識に関する競技者自身の判定は、右手利き者92.3%、左手利き者7.O%であった。利き足については、右足利き者61.6%、片足利き者30.7%であった。利き体側については右体側利き者38.6%、左体側利き者49.0%であった。利き目については右目利き者68.6%、左目利き者29.8%であった。利き手、利き足、利き体側、利き目の組合せをみると、R-R-L-Rが19.7%、R-R-R-Rが18.0%、R-L-L-Rが10.8%、R-R-L-Lが9.2%であった。調査項目のうち、「ボールや小石をける時に使う足」によって器用足を、r走幅跳のふみきり足」によって支持足を判定し、左右足の組合せを作った結果、陸上競技、水泳の選手では器用足、支持足ともに右の者と、器用足は右で支持足は左というように機能の分化した者が半数ずつ居るのに対して、球技、武道、体操競技選手では緒用足は右、支持足は左という者が65%以上を山めていた。(2)連動機能テストの結果は次のようである。握力については、ハンドホール、投擲、水泳選手が右手優位を示した。腕力については投擲、剣道、ハンドボール選手が右手優位を示した。タッピングについては、ハンドボール、投擲、跳躍選手が右手優位を示した。針糸通しについては、投擲、ラグビー、剣道選手が右手優位、狙準検査については、水泳、体操競技、中・長距離選手が右手優位をホした。脚力、閉眼棒上片足立、ステッピング、丸鉛筆拾いについては、スポーツ種目間の平均値の差を分散分析によって検討したところ、グループ内の個人差に起因する変動が大きくて有意水準に達しなかった。つまり、足の機能の差は、スポーツ種目の運動特性をみるためには不十分であったと結論される。体捻転については、柔道、バスケットボール、野球選手が左側優位を示した。