- 著者
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渡部 幸司
稲垣 麻以
澤端 秀久
- 出版者
- 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
- 雑誌
- 関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
- 巻号頁・発行日
- pp.135, 2017 (Released:2019-04-03)
【目的】随意運動に伴う予測的姿勢制御については多く報告されている。それらは主に四肢の運動に関する報告であり、口腔の運動に関する報告はみられない。そこで本研究は、挺舌運動に予測的姿勢制御が伴うかを調査する目的で、健常成人の足圧中心軌跡を測定した。【方法】実験協力者は33.5 ± 6.0 歳( 平均±標準偏差) の健常成人12 名であった。課題は、開口位での挺舌運動20 回とした(メトロノームを使用して50 回/ 分の速さ)。測定肢位は足幅が第2 中足骨間15cm となる立位。重心動揺計(ANIMA 社製)を使用して足圧中心軌跡を計測し(サンプリング周期33msec)、その映像をビデオカメラにて録画した。静止立位時の前後足圧中心位置を基準とし、録画映像より挺舌のタイミングを計り、挺舌の前後500msec の前後足圧中心軌跡の平均値を算出した。なお、協力者には本研究の概要を説明し、書面にて同意を得て行った。【結果】12 名の足圧中心軌跡平均値の波形は、挺舌開始の165msec 前に最も後方重心となり、231msec 後に最も前方重心となった。【考察】四肢の運動時の足圧中心軌跡は、運動前100 ~200msec に運動方向と反対側へ移動すると言われている。舌の重さと移動距離は非常に小さいが、挺舌運動でも四肢と同様の足圧中心軌跡をたどることが示唆された。【理学療法研究としての意義】本研究により、舌の運動時に予測的姿勢制御が伴うことが示唆された。立位等におけるバランス障害の評価や治療の際には、四肢体幹の他に舌の運動も考慮する必要があるだろう。