著者
出淵 慧 梅田 裕貴 相田 俊一 関戸 満津江 長谷川 真美 竹田 誠
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.194, 2017 (Released:2019-04-03)

【はじめに】スポーツには、野球のレイトコッキングの様に直後の動作効率を上げると考えられるものがあり、弓道にも同様の動作がある。しかし弓道競技の関節運動やそのメカニズムに対する研究は少ない。今回、弓道動作の効率を上げると考えられる動作が十分行えず、右肩関節痛を発症した症例の治療機会を得たので報告する。【症例】16 歳女性、弓道部。部活動中に右肩関節痛を発症、疼痛を我慢し部活に継続参加した事で症状が増悪。弓道競技中の右肩の痛みが主訴で来院。既往歴なし。X-P 所見は異常なし。診断名は右肩インピンジメント症候群。なお、本症例には発表について説明を行い、同意を得ている。本症例に引き分け動作を行わせたところ、体幹右側屈し、大三直後に右上腕骨に対し右肩甲骨の下方回旋が相対的に早期出現し、右肩峰前縁から外側縁に疼痛があった。触診上、安静立位で右僧帽筋上部が低緊張であり、右肩甲骨の静的アライメントは下制、下方回旋、内転位であった。徒手筋力検査は右僧帽筋上部4、右前鋸筋4 であり大三に必要な肩甲骨挙上と上方回旋が十分に行えなかった。治療はH28 年9 月23 日から11 月16 日までの間、僧帽筋上部と前鋸筋の強化、弓道動作練習を実施した。【結果】静的アライメントは左と比べ右肩甲骨下制軽度。徒手筋力検査は全項目左右共に5。僧帽筋上部の筋緊張に左右差なし。引き分け中の疼痛は消失した。【考察】本症例は体幹の側屈を用いて弓道動作を行っている。この誤った動作の繰り返しが、今回の筋力低下に繋がったと考え、引き分け動作の指導と筋力強化を行った。治療後、大三最終域の肩甲骨挙上と上方回旋が十分に行える様になり、肩甲帯マルアライメントが解消し、疼痛が改善した。動作練習により、十分に筋発揮でき正確な大三を行えるようになった。
著者
米山 恭平 榊原 僚子 浅香 貴広 高田 治実 菅沼 一男
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.193, 2017 (Released:2019-04-03)

【はじめに】前院にて右下腿切断し筋力や立位能力を考慮し装飾用義足を作成された症例に対し,義足調整を行い歩行可能となった症例について報告する.【対象】対象は慢性腎不全と診断され血液透析を行っている80 歳代男性であった.2016 年8 月に糖尿病性の閉塞性動脈硬化症により右下腿切断術をし,装飾用義足を作成した後に理学療法を目的に同年10 月に当院に入院となった.入院時の身体機能は下肢MMT3~4 レベルであり移動は車椅子自立であった.本人の希望で義足を装着し平行棒内で歩行練習を実施した.しかし,装飾用義足であるため荷重部と免荷部が不明瞭であったため断端と義足の不適合により,脛骨末端前面と底面に荷重時痛を認め,義足側での片脚立位が不可能で歩行不能であった.新たな義足作成には、経済的問題があり装飾用義足での歩行練習の実施を余儀なくされていた.被験者には研究の主旨と目的を説明し同意を得た上で実施した.【方法】歩行練習は週3 回非透析日に実施した.断端と義足の不適合を調整するためにソケット内部にゴム板を貼り調整をした.脛骨末端前面と底面の荷重時痛の原因は,ソケット後壁の高さが低かった事とソケット前面支持力不足であった.そこで脛骨前面に貼物調整をし,脛骨末端前面と底面の除圧をし,ソケット後面に貼物調整を行う事で膝蓋腱への体重支持を行った.その後アライメント調整を行った.【結果】断端状態に合わせ,貼物とアライメント調整により即時的に疼痛が消失し平行棒内を近位監視で10 往復可能となった.2 回目の治療では平行棒外歩行が自立し,現在は100 m以上の自立歩行が可能となった.【考察】本症例は前院で歩行不能と判断されたが,身体機能が残存していたため本院ではソケット適合とアライメント調整により即時的に義足歩行が可能となった.理学療法士が義足製作,適合判定の知識を十分に習得し対応することで,患者の歩行能力の向上が期待できると考えた.
著者
渡部 幸司 稲垣 麻以 澤端 秀久
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.135, 2017 (Released:2019-04-03)

【目的】随意運動に伴う予測的姿勢制御については多く報告されている。それらは主に四肢の運動に関する報告であり、口腔の運動に関する報告はみられない。そこで本研究は、挺舌運動に予測的姿勢制御が伴うかを調査する目的で、健常成人の足圧中心軌跡を測定した。【方法】実験協力者は33.5 ± 6.0 歳( 平均±標準偏差) の健常成人12 名であった。課題は、開口位での挺舌運動20 回とした(メトロノームを使用して50 回/ 分の速さ)。測定肢位は足幅が第2 中足骨間15cm となる立位。重心動揺計(ANIMA 社製)を使用して足圧中心軌跡を計測し(サンプリング周期33msec)、その映像をビデオカメラにて録画した。静止立位時の前後足圧中心位置を基準とし、録画映像より挺舌のタイミングを計り、挺舌の前後500msec の前後足圧中心軌跡の平均値を算出した。なお、協力者には本研究の概要を説明し、書面にて同意を得て行った。【結果】12 名の足圧中心軌跡平均値の波形は、挺舌開始の165msec 前に最も後方重心となり、231msec 後に最も前方重心となった。【考察】四肢の運動時の足圧中心軌跡は、運動前100 ~200msec に運動方向と反対側へ移動すると言われている。舌の重さと移動距離は非常に小さいが、挺舌運動でも四肢と同様の足圧中心軌跡をたどることが示唆された。【理学療法研究としての意義】本研究により、舌の運動時に予測的姿勢制御が伴うことが示唆された。立位等におけるバランス障害の評価や治療の際には、四肢体幹の他に舌の運動も考慮する必要があるだろう。
著者
北村 望美 鍋島 雅美 君塚 実和子 平井 竜二 山北 令子 鈴木 康仁 木村 黎史
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.2, 2017 (Released:2019-04-03)

【目的】上腕骨外側上顆炎( 以下上顆炎) は, 短橈側手根伸筋を主体とする上腕骨外側上顆の伸筋付着部障害とされている.しかし病態は不明確な点が多く, 長期化する症例や再発する症例を多く経験する. この経験から, 上顆炎患者と健常者の間に身体特性の違いが影響していると考え, 両者の関節可動域の比較, 検討を行った.【方法】対象は上顆炎患者11 名22 肢( 男7 名, 女4 名, 平均年齢58.8 ± 11.5 歳) の上顆炎群及び, 上肢に既往の無い健常者11名22肢(男7名,女4名,平均年齢53.5±15.2歳)のControl群(以下C群)とした.上顆炎群患側(右9肢,左2肢),健側(右2肢,左9 肢)に合わせ,C群患側(右9肢,左2肢),C群健側(右2肢,左9 肢)を比較対象とした.関節可動域の測定項目は肘(屈曲,伸展),前腕(回外,回内),手(掌屈,背屈,橈屈,尺屈)とし,自動と他動をそれぞれ測定した.上顆炎群とC 群の患側・健側可動域をMann-Whitney のU 検定を用いて有意差を求めた( 有意水準5%未満).【倫理的配慮, 説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に準じ, 事前に対象者に研究の目的と方法, 個人情報の取り扱いについて説明し, 同意を得た.【結果】患側自動回外では上顆炎群(85 ±10°),C 群(92.7±17.3°)と上顆炎群が有意に低値を示した(p <0.05). 患側他動回内では上顆炎群(87.3 ±12.3°),C 群(92.3 ± 7.7°)と上顆炎群が有意に低値を示した(p <0.05). 健側自動回外では上顆炎群(82.7± 27.7°),C 群(92.7± 17.3°) と上顆炎群が有意に低値を示した(p <0.05).【考察】上顆炎群は患側自動回外・他動回内, 健側自動回外に有意差を認めた. 自動回外で制限がみられた事から, 上顆炎群は回外筋等の主動作筋の機能低下により, 補助筋である手根伸筋の負荷が増大している可能性が考えられる. また, 回内の制限因子である輪状靭帯, 外側側副靭帯には上顆炎の要因である短橈側手根伸筋が起始し, 更に回外筋等と共同腱となり付着している事から, 上顆炎に関与する筋や靭帯の影響を受けている可能性が示唆された.
著者
齋藤 涼平
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.177, 2017 (Released:2019-04-03)

【はじめに】ボクシングのパンチは、ジャブ、ストレート、フック、アッパーの4 種類とされている。今回左フックでの痛みが強いと訴える左肩インピンジメント症候群と診断されたボクシング選手を担当する機会を得た。各パンチ動作の動作分析を行い、患部への力学的負荷を推察し理学療法を実施したので報告する。【症例紹介】症例は30 歳代男性。職業プロボクサー、中量級の日本トップランカー。主訴は左フックの時に左肩が痛い。現病歴、1 年ぐらい前から左肩の痛みが発生、試合後に疼痛が強くなり当院受診し理学療法開始。ヘルシンキ宣言に基づき症例には同意を得た。初期理学的所見関節可動域(Lt)肩関節屈曲160°1st 外旋/60°2nd 内旋/50 °疼痛評価安静時- 動作時痛+( 左フックNRS7/10 左ストレートNRS2/10) 整形外科テスト Neer- Hawkins+ CAT+ HFT+ EPT+【理学療法および経過】3 か月後に試合が決まっておりスケジュールを考え理学療法(週2 回)を行った。1 カ月で肩関節の可動域制限の改善と肩甲骨と胸郭のmobility とstability の向上。2 か月目では、ミット打ちでの強さを向上。フォームによって疼痛がありビデオでのフォームチェック等行った。3 か月目ではよりステップを踏んだ中やスパーリング等の実践を行っていく事で、競技復帰を行った。【考察】シャドーでの動作分析を行った際に、ジャブやストレートやアッパーは両股関節での重心移動や胸郭の動きは、矢状面上の前後/ 上下系になるが、フックでは両股関節と胸郭では回旋系の動きであった。症例はインファイタータイプでステップが少なく、両股関節での回旋が少ない中で肩甲胸郭を固めてしまい肩甲骨の動きが少ない中でフックをすることで、肩甲上腕関節に負荷が増大したと考えられる。【まとめ】ボクシングのパンチの種類の力学的課題を考え、症例の動作分析を行い力学的負荷を推察し、それを軽減するための運動療法を実施することは重要と考える。