著者
阿部 岳 稲村 伸二 赤須 通範
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.327-336, 1991 (Released:2007-02-13)
参考文献数
36
被引用文献数
4 7

ニホンマムシ毒のマウスに対する致死作用およびラットの循環器系への障害を抑制するCepharanthinの作用が検討された.マウス腹腔内投与によるニホンマムシ毒の致死量(LD50値)は1.22±0.40mg/kgであった.Cepharanthinはマムシ毒投与後に毒の作用を僅かに活性化したが,毒量に応じた適正な投与時間を選べば致死量の4~5倍以上の毒に対しても有効に作用した.マムシ毒とCepharanthinの間に用量致死相関がみられた.一方,マムシ毒はラットの腹腔内投与によって末梢血管の出血を伴う不可逆的な血圧降下を示し,さらに心拍数も抑制した.また心電図上に心室収縮の延長,相対不応期の延長そして拡張期の短縮を惹起し,変力性的にも変時性的にも心機能の抑制を示した.また,Cepharanthinは不応期の短縮と拡張期の延長作用を示し,心機能を元進した.そして,マムシ毒の障害作用に対して末梢血管の出血回復による血圧の上昇,心拍数の抑制の解除,PおよびR波振幅の部分的回復および延長した相対不応期の短縮など心機能を改善した.これらの循環器系に対する作用は致死作用を抑制していると考えられた.