著者
稲村 裕
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.87, no.7, pp.734-736,A39, 1966
被引用文献数
1

1,2-ジベンゾイルエチレンや1,2-ジベンゾイルエタン,さらに3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールの還元はすでに行なわれているが,その生成物の一つとして得られる1,4-ジフェニルブタン-1,4-ジオールには一対の立体異性体,aおよびbがあり,いずれがメソ型,いずれがラセミ型であるかが明確でなかった。著者は1,2-ジベンゾイルエタンと3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールのラネーニッケル触媒による接触還元を行ない,後者からは上記異性体のジオールaおよびbを得,前者からはジオールa,bのほかに3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールを得た。また水素化ホウ素ナトリウムによる還元では1,2-ジベンゾイルエタン,3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールのどちらからも上記ジオールa,bのみを得た。これらの還元においては生成物の収率のうちジオールbのそれが圧倒的に高かった。またtrans-1,4-ジフェニル-2-ブテン-1,4-ジオールのラネーニッケル触媒による接触還元ではその生成物としてジオールaのみが得られた。以上の還元の結果とすでに行なわれている上記被還元物質のアルミニウムイソプロポキシドによる還元の結果からこれらの還元の機構について考察し,そこから上記2種の異性体の立体構造について推論した。