著者
大森 崇史 稲永 慶太 柏木 秀行
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.225-229, 2021 (Released:2021-07-06)
参考文献数
15

【緒言】腎不全を合併した不応性の末期心不全患者の呼吸困難に対し,フェンタニル注射剤を用いて良好にコントロールできた症例を経験したので報告する.【症例】76歳,男性,拡張型心筋症のため以前より入退院を繰り返していた.慢性心不全の急性増悪で入院し,実施可能なすべての心不全治療が行われていたが,呼吸困難は改善困難であった.緩和ケアチームが介入し,腎機能低下のためにモルヒネの代替薬としてフェンタニル注射剤を使用した.経過を通して心不全は改善しなかったが,フェンタニルの投与により呼吸困難は改善した.入院41病日に死亡した.【考察】末期心不全患者は腎機能低下を伴うことが多く,呼吸困難緩和目的のモルヒネ使用が困難であることが多い.慎重な観察下にフェンタニルを代替薬として使用することにより,末期心不全患者の呼吸困難を緩和することができる可能性がある.