著者
鈴木 冴沙 髙原 梢 酒井 暢世 鈴木 伸江 稲永 詠子 菊池 元宏 朝田 芳信
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.444-450, 2019-11-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
24

著者らは上唇小帯の切除に対する治療方針決定の一助となることを目的に,3 歳から5 歳までの幼稚園児あるいは保育園児448 名を対象に,上唇小帯の形態と付着位置の変化について正常型および異常型(以下Ⅰ型からⅤ型)に分類したところ,以下の結果を得た。1 .上唇小帯の正常型と異常型の出現率は,すべての年齢において正常型は異常型に比べて高値を示したが,増齢的に正常型の割合は減少した。2 .各異常型の出現率は,Ⅰ型がすべての年齢において最も高かった。Ⅱ型はすべての年齢においてⅠ型に次いで高く,増齢的な増減の方向性は認められなかった。Ⅲ型は,増齢的に倍以上に増加した。Ⅳ型は増齢的な増減の方向性は認められなかった。Ⅴ型は5 歳で出現が認められた。3 .正常型と異常型(Ⅰ型,Ⅱ型,高位付着肥厚型)の出現率は,3 歳において正常型が有意に高く,高位付着肥厚型が有意に低く,5 歳において高位付着肥厚型の出現率が有意に高い傾向にあった。 これらより,3 歳では異常型の主体がⅠ型とⅡ型であり,変動しにくい型であるⅣ型とⅤ型ではないことから,上唇小帯異常が認められたとしても経過観察を行うことが適切であると考えられた。5 歳では高位付着肥厚型の出現率が高い傾向にあるため,上唇小帯異常が継続する可能性が考えられることから,永久前歯交換期に認められる正中離開や口唇閉鎖機能に影響を及ぼすことを念頭に置いた対応が求められることが示唆された。