著者
稲田 健太郎 志田 大 松田 真輝 井上 暁 梅北 信孝
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1488-1492, 2011 (Released:2011-12-25)
参考文献数
20

症例は63歳,男性.2010年7月に腹痛と嘔気を主訴に当院を受診した.腹部単純エックス線検査で大腸イレウスと判断,腹部造影CT検査でS状結腸に造影効果を伴う壁肥厚像およびその口側に2cm大の異物を認めた.種子嵌頓による大腸癌イレウスを疑い,緊急下部消化管内視鏡検査を行った.S状結腸に2型病変による全周性の狭窄を認め,経肛門的イレウス管を挿入して口側腸管を減圧した.入院6日後にリンパ節郭清を伴うS状結腸切除術を行った.切除標本では腫瘍口側に梅の種子が確認できた.総合診断SSN1H0P0M0,fstageIIIa.術後は合併症なく経過し,術後7病日で退院.植物種子は大きさや形状から通常イレウスの原因となりにくく,植物種子によるイレウスを疑った際は,器質的疾患,特に大腸イレウスに関しては大腸癌を念頭においた治療方針を検討する必要があると考えられた.