著者
稲田 義行 仲 建彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.115, no.3, pp.151-160, 2000-03-01 (Released:2011-09-07)
参考文献数
60
被引用文献数
3 4

非ペプチド型アンジオテンシンII (AII) AT1サブタイプ受容体拮抗薬, カンデサルタンシレキセチルは腸管吸収の過程で完全に活性体のカンデサルタンに変換される.In vitroの血管標本でカンデサルタンはAIIの収縮曲線の最大収縮を濃度に依存して抑制し, insurmountableな拮抗作用を呈し, 高濃度のAIIのAT1受容体を介する作用を確実に抑制させる.結合阻害実験の成績からカンデサルタンがAT1受容体に強固に結合し, その解離が遅いことが示唆されている.カンデサルタンシレキセチルの抗高血圧作用は種々の高血圧モデルにおいて認められており, 高血圧自然発症ラットにおいて, カンデサルタンシレキセチルは0.1~10mgkgという低用量で持続性の降圧作用を発現した.カンデサルタンシレキセチルの持続的な降圧作用は高血1圧症患者におけるtrough peak比からも確認されている.AII受容体拮抗薬の投与によりAII濃度は増加することが知られており, 上昇したAIIは受容体へ拮抗薬と競合し結合する.AII濃度が上昇した場合insurmountableな拮抗薬はsurmountableな拮抗薬よりもAIIの作用を効果的に抑制し, 有利に働くものと考えられる.多数の研究おいてカンデサルタンシレキセチルが降圧作用に加えて臓器保護作用を有することが示された.AT1受容体拮抗薬はACE阻害薬と同様に高血圧症の治療のみならず, 心臓不全および腎疾患の治療に加え, 他の循環器疾患の治療および防止に役立つものと期待される.