著者
稲見 真倫
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.142, no.2, pp.63-67, 2013 (Released:2013-08-09)
参考文献数
26

近年の免疫領域における細胞内シグナル伝達研究の発展は目覚ましいものがある.最先端の分子医学的な手法を駆使することにより,主要免疫担当細胞における重要なシグナル伝達経路が明らかとなり,その中の鍵となる分子が同定されてきた.その中でも特にタンパク質リン酸化酵素は,ほぼ全てのシグナル伝達経路に関与し決定的な役割を果たしていることがわかっている.タンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)はATPからリン酸基を転移させて,特定のタンパク質をリン酸化する酵素である.ATP結合領域は各キナーゼにおいて相同性が高いため,特定のキナーゼのATP結合領域に特異的に拮抗する低分子を見出すことは難しいとも考えられてきた.しかしながら,がん領域におけるイマチニブの成功により,がん分子標的薬としてのキナーゼ阻害薬が非常に注目され,創薬におけるキナーゼ阻害薬の可能性が今までになく議論されるようになってきた.自己免疫疾患領域においても,その細胞内シグナル伝達におけるキナーゼの重要性は認識されていたものの,前臨床の研究に留まっていたが,p38阻害薬が臨床入りし,ついに2012年にはJAK阻害薬が上市された.本総説においては,JAK阻害薬に焦点を当てて,自己免疫疾患におけるキナーゼの重要性,創薬の可能性,問題点などを概説したい.