- 著者
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新井 千賀子
山中 幸宏
尾形 真樹
稲見 達也
- 出版者
- 視覚障害リハビリテーション協会
- 雑誌
- 視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.126, 2012
<B>【はじめに】</B><BR> 緑内障など中心視力が高く保たれ視野障害が主な問題となる場合、老視になると遠近両用眼鏡を希望する場合がある。視野の状態によっては加入部分に活用できる視野を合わせる事が困難になる。本症例は、眼鏡のデザインを工夫する事で遠方視と近方視の両立と近方視での拡大効果を得たので報告する。<BR><BR><B>【症例】</B><BR> 疾患:緑内障、年齢:50代後半、視力:右眼(0.03×-5.5D)左眼(1.0×-5.5D)、中心視野:右眼は中心部に暗点が有り、左眼は中心部周辺に比較暗点が有るが中心部は直径10°程度の視野が読書に活用できる。ニーズ:遠方(2~3m)の画面を見ながら台本を読みアフレコをする職業。遠方視と近方視の繰り返しをスムーズに行いたい。<BR><BR><B>【補助具の検討】</B><BR> 読書評価(MNREAD-J)より臨界文字サイズ0.29logMAR 最大読書速度:269文字/分が得られ、近方視は年齢に対応した加入で十分であった。累進レンズの試用では近方視部分を左眼の視野で使用する事が困難であった。二重焦点レンズでは、1)加入部分のレンズの面積が小さく台本が十分に読めない、2)遠方視の後に瞬時に近方の読む場所を見つけにくいという問題点が分った。近視が-5.5Dあるので近方視は裸眼で拡大効果が得られる為、遠方は矯正、近方は裸眼で見るデザインの眼鏡を検討し、レンズの下部を切り取り上部のみに矯正レンズを入れる眼鏡を作成した。その結果、下方の視野が広がり拡大効果も得られ患者のニーズに対応できた。<BR><BR><B>【考察】</B><BR> 視力が高いと眼鏡処方には問題がないと考えられがちである。しかし、本症例のように希望する作業や職業によっては一般的な遠近両用眼鏡では十分に対応が出来ない。この場合、作業の分析と補助具の工夫が必要となった。眼鏡を補助具の一つと考え視機能や読書評価結果などを検討することはロービジョンケアの中の一つの領域として捉えても良いのではないかと考える。