- 著者
-
稲角 嘉彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本薬剤疫学会
- 雑誌
- 薬剤疫学 (ISSN:13420445)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.2, pp.62-70, 2022-10-20 (Released:2022-11-21)
新型コロナワクチンは予防接種法に基づく特例臨時接種として,国の指示の下,市町村において予防接種を実施することや必要な費用は国が負担すること等が特別に規定された一方で,接種の記録や副反応疑い報告制度等の枠組みについては,定期の予防接種と同じもので対応している.また,具体的な安全対策については,新型コロナワクチンの接種開始以降,副反応疑い報告制度に基づいて独立行政法人医薬品医療機器総合機構に報告された情報について,通常よりも高い頻度で審議会を開催して評価しているほか,国が研究班を設置してワクチン接種後の健康状況を調査し,その結果も審議会に報告するとともに,審議会の資料としても広く公表してきた.新型コロナワクチンの電子システムに着目すると,特例臨時接種の期間は,接種履歴についてはデジタル庁が構築したワクチン接種記録システム(VRS)を活用したり,流通情報については厚生労働省が構築したワクチン接種円滑化システム(V‒SYS)を活用したりして,安全性評価の基礎となる接種者数や納入されたワクチンのロット番号等を把握することができるようになっている.さらに,システムについて,経済財政運営と改革の基本方針2022 ではオンライン資格確認等システムのネットワークを拡充し,レセプト・特定健診等情報に加えて,予防接種,電子カルテ等の情報を共有・交換できる全国的なプラットフォームの創設等を進めることや,デジタル社会の実現に向けた重点計画ではマイナンバーカードを活用して予防接種事務全体のデジタル化に取り組むとともに,予防接種の実施状況,副反応に係る匿名データベースを整備し,レセプト情報・特定健診等情報データベース等との連結解析を可能とすることとされている.このように,ワクチンの安全性等を評価するための基盤整備は,今後さらに進むものと期待される.