著者
穆 紅
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究会
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究
巻号頁・発行日
no.4, pp.27-47, 2008

本研究は、二言語環境にいる子どもたちが直面している母語の低下・喪失、及びそれによりもたらされる発達の中断などの問題に注目するものである。日本の公立小中学校に在籍している、中国語を母語とする子どもを対象に、来日年齢、滞日年数及び母語保持努力の中でどれが母語会話力の認知面と最も関係が深いかを検討した。その結果、全体でも、小学生・中学生のカテゴリー別においても、母語保持努力、特に母語による読み書きを行うことが母語会話力の認知面と最も関係が深いことがわかった。このことから、二言語環境に置かれても、母語で読み書きを行うことは母語の認知面の保持・育成を促す可能性が高いことが示された。