著者
穴水 ゆかり 加藤 弘通
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.17-35, 2017-12-22

本稿では,過去の自傷研究を整理することにより,学校教育現場の自傷児童生徒支援 において検討すべき学術的課題を示すことを目的とした。まず自傷の用語と定義の問題につい て検討し,児童生徒の自傷の実態と関連する問題行動および背景要因について整理した。その 結果,定義や実態については調査研究により大きな幅があり,教育現場で認識される自傷とも 隔たりがあることから,ある種の自傷が見逃されている可能性が明らかになった。また関連要 因の検討から,教員は自傷行為そのものだけではなく,さまざまな問題行動や関連要因を通し て自傷の発見・対応に努める必要があり,その一方で,自傷を通して,彼らが置かれている環 境や心理面の問題に気づくことも重要と考えられた。今後の自傷研究の課題としては,養護教 諭は研修等を通して自傷への理解を深めること,養護教諭のみならず一般教員を対象とした実 態調査や,発達差に留意した研究の必要性が示唆された。