著者
窪津 宏美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.176, pp.16-32, 2020-08-25 (Released:2022-08-26)
参考文献数
13

公立学校においても多文化背景で育つ子どもが在籍し,日本語指導の必要な児童生徒は増加傾向にある。日本の政策や経済状況により共生が広がる今,誰もが安心して教育を受けることができるための支援はどうあるべきかを問い直し,取組実践を再評価することが求められる。エンパワーメント理論を用い,小学校就学時に多文化背景家庭を支援する取組を調査した結果,学校と地域支援団体が協働してマッチした支援を提供し家庭を勇気づけていた。1年の継続観察による具体事例を分析し,家庭の意識化により子どもが本来の力を取り戻す場を得たこと,学校教員が自己効力感をもったことが確認され,「協働的社会」の実現へ向けた取組の道筋が考察された。支援者と被支援者の意識に着目して就学初期支援に組み込まれるエンパワーメントの様相を明らかにし,公的な支援構築に向け支援の継続モデルを提案した。