著者
窪田 杏子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

(1)論文として、以下の題目でこれまでの成果をまとめ、雑誌にて発表した。『Tumor necrosis factor receptor-associated protein 1 regulates cell adhesion and synaptic morphology via modulation of N-cadherin expression』Kubota K.et al.Journal of neurochemistry(2009)110,496-508(2)上記の論文ではカドヘリンによる細胞間接着がうつ病発症に関与する可能性が示唆されたが、分子レベルでの詳細な解明には至っていない。近年、微小管上を移動するモータータンパク質による輸送の破綻が精神疾患の発症に寄与する可能性が報告されている。さらに、当研究室において新たに微小管上を移動するモータータンパク質とカドヘリン複合体との関わりが見出されたことから、本年度はそのカドヘリンと微小管上を細胞接着部位へと移動することが考えられるKIFC3について詳細な検討を行った。結果、・KIFC3結合タンパク質Xを同定した。・KIFC3またはタンパク質Xの発現を抑制すると細胞間接着に異常が認められた。よってカドヘリンによる細胞間接着の制御に微小管上を運行するモータータンパク質が関わっていることが新たにわかった。この知見は精神疾患発症機序のみならず、細胞間接着の異常によって引き起こされる他の疾患の治療法開発においても大変重要なものである。