著者
立山 善康
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.56, pp.15-28, 1987-11-10 (Released:2009-09-04)
参考文献数
52

本稿の目的は、デューイ (John Dewey1859-1952) の教育理論を、その哲学的人間観の基底において把え、そこには、一定の「個人主義的」な脈絡があり、「個性」こそが、教育という営為の能動性と受動性とを統合的に把える、デューイの人間主義的な教育の力動性を有効に展開させている一つの機能的な原理であるのを論証することにある。そこで本論では、まずデューイの「個性」の機能としての「動態的な自己 (dynamic self) 」の概念を検討し、ついで、こうした自己の「個性」が契機となって、自然や社会と相互媒介的に、共有されている意味を開示してゆく一定の脈絡を明らかにする。最後に、個性尊重の立場からはどうしても対峙せざるをえない学問中心主義の立場に触れ、そうした立場に前提されている知の「客観主義的な理想」に対する人間主義的な知識の成立基盤としての「個性」を、デューイの教育哲学における機能的側面から位置づけたい。