著者
川田 慎一 米満 幸一郎 盛本 真司 小村 寛 白石 真紀 立山 由香理 上國料 章展 有村 麻衣子 内園 均
出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.351-358, 2006 (Released:2007-07-27)
参考文献数
15

目的 : 我々は, 当院の1994年4月から2004年3月まで10年間の人間ドック腹部超音波検査 (US) において腎精密検査統計をもとに, 超音波検診の現状と有効性について検討を行った. 対象と方法 : 腎のUS有所見実人数4,339人の中で, 当院CTでの精密検査を施行した129人を対象とし, US所見とCT診断結果について比較検討した. 結果と考察 : 対象の129人中, USで腎腫瘍を疑った73人のCT診断結果は, 正常45人 (61.6%), 単純性腎嚢胞13人 (17.8%), 複雑性腎嚢胞5人 (6.8%), 悪性腫瘍疑い5人 (6.8%), 腎血管筋脂肪腫2人 (2.7%), 腎盂拡張1人 (1.4%), 肉芽腫1人 (1.4%), 奇形腫1人 (1.4%) であった. 悪性腫瘍疑いのうち4例はMRIを施行し, 腎癌が疑われ手術を施行した. その結果, 病理組織学的に腎癌と確定診断のついた症例は2例で, 当院人間ドックUSにおける腎癌検出率は0.046%であった. 腎癌2例のうち, 1例はUSで腎嚢胞と嚢胞性腎癌の鑑別ができず手術に至るまで3年間精査されなかった. 結論 : 単純性腎嚢胞と確定できない場合は, US再検や精密検査を積極的に施行することが必要と考えられた. またUS施行技師の技術と判読医のレベルの向上を図るために, 精密検査の情報を関係者にフィードバックするシステム構築の必要性があると思われた.