著者
立松 潔
出版者
山形大学
雑誌
山形大学高等教育研究年報 : 山形大学高等教育研究企画センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.51-55, 2008-03-31

山形大学の教養教育では、平成16年度よりGPA制度を導入している。GPA制とは「学生の学習の成果を、履修した単位数とともに成績を平均したGPAによって把握し、その値に基づいて、学生の学習に関する相談に応じ、指導を行うためのもの」であり、やはり16年度から導入された新たな修学支援体制である「YUサボーティングシステム」の3つの柱の一つという重要な役割を与えられている。GPA制度に基づく修学指導とは、たとえば各学部ごとにGPAの最低基準値をさだめ、それを下回る学生を対象にアドバイザーが面談を行ったり、勉学の督励を行ったりすることを意味している。山形大学中期計画(平成16年6月3日文部科学大臣認可)に、「GPAを活用した機動的な修学支援を行う」とされているのも、このような指導を念頭に置いたものである。このように本学のGpA制は学生への修学支援・学習指導のためと位置づけられて導入されたのであるが、本来のGPA制度の役割は単にそれだけにとどまらない。それは教育内容の改善に向けた教員側の取組みにとっても有用な道具となりうるからである。山形大学では、平成13年3月の『山形大学のあるべき姿』で「卒業生の質の確保」のための方策として、次のようにGPAに言及している。すなわち、「大学が社会に対し,卒業生・修了生の一定水準の学力を保証するためには,成績評価の客観的システムを構築する必要がある。そのためには,例えばアメリカ等で導入されているGPA(Grade PointAverage)のような指数方式を用いて,個々の学生に対しても,適宜,現時点でのトータル評価を把握させ,あるいは努力目標として示し,より的確な評価を与え,学生の4年間の勉学における学習効果を高めるように措置するとともに,社会に対して卒業生・修了生の持つ学力の水準を示す必要がある」と。「より的確な成績評価」の実施が、社会に対して卒業生の学力水準を示すための不可欠の条件であり、その実現のためにGPA制度を活用すべしというのである。また、中期計画でも「教育の成果・効果を検証するため,GPA分布の継続的調査」を行うとしており、さらに「単位取得状況,GPAの分布,履修状況,学生に対するアンケート調査などを踏まえ,教育課程の改善・充実を図る」としている。教育の成果の検証、教育内容の改善のための道具としてGPAを積極的に活用する方針を打ち出しているのである。本稿は以上のような動向を踏まえ、今後の授業改善への取り組みに生かすため、本学の教養教育科目のGPA分布を分析しようというものである。