著者
坂本 尚史 鈴木 滋 立松 英信 大塚 良平
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
岩石鉱物鉱床学会誌 (ISSN:00214825)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.164-171, 1980-05-05 (Released:2008-08-07)
参考文献数
6
被引用文献数
1 3

青函トンネルの先進導坑,北海道方約5000mの地点において,新第三紀訓縫層中の断層を埋めて産する茶褐色の鱗片状鉱物がサンコーコンサルタント,伊藤昌史氏により発見された。この試料は,早稲田大学鞠子正教授を経て筆者らに提供され,その後の室内研究により我国での3番目の産出である鉄セピオライトであることが明らかにされた。 化学分析値から計算された脱水相の単位胞の1/2構造式は以下の通りである。 (Si11.49Ti0.03Al0.38Fe3+0.10)12.00(Fe3+1.25Fe2+0.26Mn0.02Mg6.00)7.53O32・Ca0.03Na0.05K0.04 一方,FeをすべてFe2+であるとしてO30(OH)4をもとにして構造式を計算すると (Si11.74Ti0.03Al0.23)12.00(Al0.16Fe2+1.65Mn0.02Mg6.13)7.96O30(OH)4・Ca0.03Na0.05K0.04 となり,理想式によく一致する,従って,この鉄セピオライト中のFeは当初Fe2+として形成され,その後酸化されたものと考えられた。 この論文では,このほかに,X線回折データ,熱分析データ等の鉱物学的データが示されている。