著者
立石 俊一 畑中 博文
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, 1978-09-15

中部地方には急しゅんな山岳地形が存在し, 地質的にも大小の断層破砕帯が発達しているため, トンネル工事は難工事となることが多い。本文は, 中部山岳地域で最近施工された四つの国道トンネルにおいて遭遇した断層破砕帯の状況とその処理例について述べている。岡部トンネルは, 糸魚川-静岡構造線の影響圏内にあり, 地すべりを誘発し, 対策を講じている。下呂トンネルは, 阿寺断層破砕帯の中に位置しており, クローラドリルによる先進ボーリング, アーチ支持横坑, 上半側壁先進導坑, 土平囲い支保工などの特殊工法を実施している。平湯トンネルは, 粘板岩の破砕帯部で強大な地圧を受け, キーストンプレートによる仮巻きなどの補強工を行なっている。また, 石灰岩層では, 空洞と湧水の対策としてセメント注入を行なっている。新鳥居トンネルでは, 未固結の砂状あるいはシルト状に破砕されたチャート層が約1000 m続き, 鏡張り, 鋼矢板, 支保工の根固め, インバートスラット, 同コンクリート打ち, 側壁一次巻きの繰返し施工により側壁導坑を掘進している。