著者
竹丸 巌 加塩 信広 前野 幸二
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.255-264, 2009-06-20 (Released:2012-09-26)
参考文献数
16

1999年に鹿児島湾内で上湾症が高率に発生した養殖場のブリおよびカンパチについて,形態異常の特徴とその原因について調べた。両魚種ともに上湾症発生の原因と考えられる細菌や寄生虫の感染は認められず,ブリについては形態異常を起こす可能性のある農薬であるカーバメート系殺虫剤の残留検査を行ったが,検出されなかった。体型および脊椎骨の形態的特長として,ブリでは魚体の中央部または中央からやや後方部における腹側の方向への形態異常(後湾)と,尾部における背側の方向への形態異常(前湾)が複合的に発生しているものが多く認められた。カンパチではブリと同様の形態異常も見られたが,ブリよりも形態異常の程度が小さく,形態異常部位はやや前方に位置していた。また,カンパチではこのような形態異常以外に,ブリにはなかった魚体中央よりやや前方における著しい背側の方向への形態異常(前湾)が認められた。ブリとカンパチとの間に見られる形態異常の特徴の違いは,脊椎骨の構造の違いあるいは種苗の由来(天然・人工)によるものと推察された。