著者
沖住 省吾 竹内 文夫 土屋 幸代
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.E1155-E1155, 2006

【はじめに】当通所リハビリテーションでは個別療法導入後、過半数の症例において日常生活自立度の維持・改善を認めたが、社会参加の向上には至らなかった事を第40回全国理学療法学術大会で報告した。そこで今回、屋外造園作業(以後、造園活動とする)を療法の選択肢として導入し、活動能力や社会参加におよぼした影響を検討したので報告する。<BR>【造園活動について】造園は利用者を交えながら、介助・監視下で種々の活動を実施するものである。活動の内容は、1、庭園整備:デザイン・造園、草むしり、芝刈り、枯れ草集め、石拾い、花壇作りなど。2、畑作業:菜園収穫、園芸、水撒き、木実の収穫など。3、生き物飼育。4、運動:庭園散策による歩行耐久性、不整地歩行、運動会などである。<BR>【対象および方法】追跡期間は、平成15年4月から平成17年4月までの約24ヶ月間であり、造園企画は平成15年11月に発足した。対象は通所リハビリテーション利用者のうち、個別療法を併用し且つ追跡できた75例である。この75症例中造園活動が併用できた症例は47名であった。活動能力の指標はBarthel index(以下BIと略)と老研式活動能力指標(以下活動指標と略)を用いた。活動指標は「自治会や老人会への参加」と「生きがいあるいは宗教」の2項目を加え15項目で評価し、BIと比較しやすいように百分率で表した。新たな療法が選択でき、期待される内容も変化したのでニーズの変化も合わせて調査した。<BR>【結果】75例のBIは改善27名36%、26名35%が維持され、21名28%が低下していた。屋外造園活動を併用した47名の内BIが低下した例は13%であり、その他は維持・改善の経過をたどった。更に造園活動併用者の内BI改善群を抽出するとBI平均79点から93点へと有意に向上し、活動指標も29%から38%に向上した。一方、ニーズ変化では次の特徴を示していた。造園活動前は活動性に関するニーズは皆無であり、シビレや除痛、麻痺肢の回復などの機能的ニーズが多くを占めていた。しかし、造園活動導入後は、屋外活動や趣味・余暇活動などが全ニーズの24%を占めるようになった。興味深いのは、造園活動の有無に関わらず、立ち上りや移動手段が全ニーズの30%以上を占め最も多かった事である。<BR>【考察】造園活動は、活動能力に加えて社会参加の向上、生きがい作りとしても好影響をもたらした。造園活動を開始する前は、室内の限られた環境での活動がほとんどであったが、活動範囲の拡大により運動量の増加と感情抑揚や動くことに対するモチベーションに変化をもたらしたものと考える。また、以前は環境安全面などに障壁があり、趣味や余暇活動をあきらめざるを得なかった境遇の人たちが多かったが、今回のアプローチ導入によって、これまで成しえなかった事が安全な環境と適切な介助量のもとで実行できるようになり、生活意欲や趣味・余暇活動に対する更なる動機付けに結びついたものと思われる。