著者
藤田 秋一 置塩 豊 竹内 正吉 畑 文明
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.170-178, 2004 (Released:2004-02-29)
参考文献数
25
被引用文献数
4 3

消化管には外来性に刺激がなくとも自発運動がみられる.近年,この自発運動のペースメーカー細胞としてカハールの介在細胞(interstitial cells of Cajal: ICC)が注目されてきた.ペースメーカー細胞としてmyenteric plexus層およびsubmuscular plexus層に分布するICCが考えられており,ICCで発生した活動電位は隣接する平滑筋細胞へと伝えられ,消化管の自発運動が引き起こされると考えられている.またコリン作動性神経あるいはnitrergic神経を介する平滑筋の収縮あるいは弛緩反応は,神経から一旦ICCにそのシグナルが伝わり,その後ICCからgap junctionを介して平滑筋細胞へとシグナル伝達が起こると考えられている.これらの知見はICCを欠如したミュータントマウス(W/WVおよびSl/Sld)を用いた検討により,主に食道,胃および小腸において明らかにされてきた.W/WVマウスでさらに詳細に検討することにより,小腸ではペースメーカー細胞としての働きを担うと考えられてきたmyenteric plexus層のICC-MYが,神経を介する収縮·弛緩反応に深く関わっていることが判明した.さらに伸展反射によって引き起こされる上行性収縮および下行性弛緩はW/WVマウスの小腸ではみられないことから,ICC-MYが蠕動反射に関与する神経経路のシグナル伝達に関わることが示唆された.一方,ICC-MYおよび輪走筋層内に分布するICC-IMが完全に消失しているW/WVマウスの遠位結腸においては,伸展刺激などによる神経を介する収縮·弛緩反応はwild typeマウスと同様にみられた.従って遠位結腸においては,神経から平滑筋細胞への神経伝達にICC-MYおよびICC-IMが関与することはなさそうである.消化管運動調節へのICCの関与の度合い,あるいは関与の様式は消化管の部位により異なると考えられる.
著者
東 泰孝 竹内 正吉
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.143, no.6, pp.275-278, 2014 (Released:2014-06-10)
参考文献数
44

炎症性腸疾患は,難治性の慢性腸炎であり,小腸および大腸を好発部位とするクローン病および大腸に起こる潰瘍性大腸炎が代表的な疾患である.いずれも慢性的な炎症の緩解と再燃を繰り返す疾患である.原因は未だ完全には解明されていないが,これまでに,IL-2,IL-10およびT 細胞受容体の遺伝子欠損マウスが炎症性の腸炎を惹起することから,免疫異常,特に粘膜免疫系の過剰な反応によって誘発される可能性が示されている.今回,IL-10ファミリーに分類されるIL-19の炎症性腸疾患における役割を検討したところ,クローン病モデルおよび潰瘍性大腸炎モデルのいずれにおいても,IL-19遺伝子欠損に伴い炎症の悪化が起こることが明らかとなった.