著者
千代丸 勝美 竹本 和広
出版者
特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会
雑誌
JSBi Bioinformatics Review (ISSN:24357022)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.26-36, 2021 (Released:2021-04-23)
参考文献数
60

生物ネットワーク解析はバイオインフォマティクスやシステム生物学における重要なアプローチのひとつである。特に、ネットワーク医学の観点からは、疾病遺伝子や薬剤標的分子の推定のような優先順位づけや疾病モジュールの同定のようなネットワーククラスタリングなどが求められる。本総説では、そのような多様なネットワーク解析に有効なネットワーク伝播について紹介する。ネットワーク伝播は半教師あり学習手法の一種であり、既知のラベルをネットワーク上で伝播させることによって重要なノードや部分ネットワークを見つける。ネットワーク伝播は理論背景が平易であり、拡張性が高い。そのため様々な問題に適用することができる。また、解析結果の解釈性が高く、異質なデータへの適用も容易であるという利点も持つ。ここでは、いくつかの代表的な手法を題材にしながら、ネットワーク伝播の基礎から応用までを解説する。