- 著者
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竹本 豊
- 出版者
- 林業経済学会
- 雑誌
- 林業経済研究 (ISSN:02851598)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.3, pp.12-22, 2009-11-01
- 被引用文献数
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2003年4月に,高知県が全国で初めて導入した新税制「森林環境税」は,その後,同様の新税制が30の都道府県にまで波及したことを考えると,非常に興味深い事例である。本稿では,行政内部組織に焦点をあて,森林環境税導入の政策決定過程を解明した。政策決定過程における主要な政策調整は,課税方式と税の使途に存在した。課税方式では,(1)「水道課税方式」の従量制から定額制への変更と(2)「県民税超過課税方式」の選択,税の使途では,(1)ハード・ソフト両面からソフト中心事業への変更と(2)ハード事業の復活である。決定過程を分析すると,知事発言により,新税導入に向けた取り組みが積極化した税務課の新税実現に向けた現実的選択の積み重ねと,決定段階での森林局の実質的関与が特徴的であった。政策決定過程を仮説的に定義すると,ある政策目的に対して理想的な政策手段を追及する過程ではなく,ある政策目的を円滑に達成するための政策手段を選択していく過程であるといえる。